citrus sun_expansions

コレは超絶にカッコ良い〜 アルバム・タイトルにも掲げられているロニー・リストン・スミスのカヴァー<Expansions>のコトだ。そして続くオリジナル曲<A Lust For Life>は、70年代の古き良きクロスオーヴァー感を湛えたモダン・ジャズ・ファンクで、ポルトガル出身の若きギタリスト:フランシスコ・サレスのジョージ・ベンソン張りの表現力が噴出。それに導かれてレガ・ダウナのハーモニカ・ソロ(彼も弱冠22歳)、ドミニク・グローヴァーのアグレッシヴなトランペットが爆裂する。イヤイヤこのノッケの2曲で、もう降参状態なのだ。

この『EXPANSIONS AND VISIONS』は、インコグニートの別働隊:シトラス・サンの2年ぶり4作目。コロナの影響は発売延期になっていたものが、ようやくリリースになった。彼らは、ギタリストでもあるブルーイの憧れであり、UKジャズ界の至宝とも言われるジム・マレンをフィーチャーする形で2000 年にスタート。当初の活動は極めて断続的だったが、2010 年代に入ってプロジェクトが活性化し、インコグニートのリズム・セクションが主導するユニットとして、準レギュラー的な動きを見せるようになった。

「インコグニートを私のキャリアの基幹だと思っているなら、シトラス・サンは彼女と一緒に乗るスピードボードのようなもの」とブルーイ。言い換えれば、パブリックなメイン・ワークがインコグニートなのに対し、シトラス・サンはメンバーたちのお愉しみバンド。そしてどのどちらでもない個人的な動きとして、ブルーイのソロ活動がある。

現在のシトラス・サンの中核は、本体の鉄壁ボトムを支えるフランシス・ヒルトン(b)とフランチェスコ・メンドリア(ds)、ブルーイの右腕マット・クーパー(kyd)、“ ヤング・アル・ディ・メオラ" と異名を取るフランシスコ・サレス(g)にマスター:ブルーイ(g, vo)。そこへ曲ごとにスペシャル・タレントが迎えられる。今回のゲスト・シンガーは、ヴァレリー・エティエンヌ、ノエル・マッコイ、デボラ・ボンドの3人。もちろんマレン御大も参加している。そうなると、メンバーたちのミュージシャンとしての素直な思いがシトラス・サンへと集約されていくことは言わずもがな。表と裏、ではないけれど、そのあたりのバランスを上手にコントロールしていくことが、プロデューサー:ブルーイの腕の見せ所だ。

<Expansions>に次ぐ注目曲は、アシュフォード&シンプソンがモータウンのザ・メッセンジャーズに書き、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルやマリーナ・ショウで有名になった<California Soul>。加えてスティーヴィー・ワンダーに捧げた<Back To Wonderland>、故リオン・ウェアに捧げるためマレンが極上のワン・テイク・ソロをキメた<Stay You>、ブルーイとデボラ・ボンドのデュエット<Thinking Of You>など、聴きどころは多い。本家インコグニートより音楽的自由度が高いから、演奏表現や緻密なアレンジに耳が行くウルサ方の音楽マニアには、むしろコチラがオススメ。国内盤はボーナスが1曲追加されている。

本来この5月に来日予定だったシトラス・サンだが、やはり彼らのライヴもコロナ禍で延期。でも個人的にはインコグニートより、コチラのライヴの方が楽しみなのだ。