deep purple_whoosh!

あいやぁ〜、コレは傑作。デビューから52年、再結成から26年。リッチー・ブラックモア脱退から数えると7作目のスタジオ作。ジョン・ロードも抜けて、イアン・ペイス、イアン・ギラン、ロジャー・グローヴァー、スティーヴ・モーズにドン・エイリーという現行の陣容になってからは、17年目で5作目となる。もっというと、ベテラン・プロデューサーのボブ・エズリンと組んでからは3作目。今の充実ぶりは、このエズリンあってこそだろう。前作『INFINITE』(17年)が最後のアルバムと言われていたけれど、こうして新作が出た。またコロナ禍で、予定されてたファイナル・ツアーが1年先送りになったことから、もう1回スタジオに戻る可能性もあるという。頑張るな、爺さんたち

『INFINITE』はなかなかよくできたハード・ロック・アルバムだったけれど、正直、あのレヴェルならあまり積極的に追いかける意味はないな、と個人的に思っていた。70年代に一世を風靡した超ベテラン・ロック・バンドの風格を備えた現役グループとしては、まさにトップ・クラスにあることを実感。それはある意味、どんなに人気があろうとも、過去の呪縛から逃れられないクイーンとはまったく違った歩みだ。そしてそこには進化と変化を恐れない、彼らなりの大物としての矜持があった。

それでも、その歩幅は想定内で驚きは少なく…。なのでこの新作情報が入ってもすぐには飛びつかず…。まずは先行リリースされたリード・トラック<Throw My Bones>や<Man Alive>のPVを観た。それで彼らの前向きな姿勢を感じ取り、コレはやっぱりゲットしないと、という気になった。ロートルの趣味や余興ではなく、世代を超越して本気で勝ちに行ってるスタンスが感じられたからである。

そりゃあ結成メンバーはペイシーだけで、もうリッチーもジョン・ロードもいない。でも単に2期メンバーが3人いるというだけなく、レインボーでリッチーを支えていた者も2人いるワケで、元の鞘に戻った感がある。ラストに第1期〜2期初動にかけてプレイしていたインスト曲<And The Address>を再演しているのも、やっぱりオールド・ファンには感慨深いモノがあるな。

それでもハッキリ、懐メロ・バンドなどではない。看板は “昔の名前” だけれど、今になっても70年代の焼き直しを求めるなら、それこそ当時のアルバムを聴いてろと思う。サウンド的に新しいモノではなく、ペイシーのドラムに象徴されるように、もはや当時のような疾走感のあるスリリングなハード・ロックはもう求め得ない。でも今の爺さんメンバーたちが、自らのキャリアの上に立って気概を込めたサウンドが鳴らしている。仮にこの音を20〜30歳台の彼らがプレイしたとしても、こんな表情豊かで深みや重厚感のあるハード・ロックにはならないだろう。<Child In Time>のようなシャウトはできないが、反対に今だからこそ歌えるモノがある。初期イエスみたいな曲が飛び出してくるのはちょっと驚いたものの、あの頃は今と違って、ハード・ロックもプログレもとても近しい存在だったな。

同じような復活劇・再結成でも、そこにどんなモチベーションがあるのか、金稼ぎなのか道楽なのか、あるいは表現欲求なのか、そこを見極めるのが大事。これを聴いて、どうせならデヴィッド・カヴァーデイルも、初期ホワイトスネイクみたいに素直に演りたいコトをやればイイのに、なんて思ってしまった。