billy ocean

全米No.1の<Caribbean Queen>、続いて全米2位の<Loverboy>、更にアルバム・タイトル曲<Suddenly >が同4位と、84年になってまさにサドゥンリーな大成功を手にしたビリー・オーシャン。翌85年末からは、映画『ナイルの宝石』のテーマ曲<When the Going Gets Tough, the Tough Get Going>が再びチャートを上昇して最高2位。86年のアルバム『LOVE ZONE』からも、<There'll Be Sad Songs (サッド・ソングス)>がまたしても全米首位。タイトル曲も続けてトップ10入りした。そして88年にも<Get Outta My Dreams, Get Into My Car>が3度目の全米トップに。この4年間のビリー・オーシャンの活躍は、まさに目を見張るモノがあった。ところがその後レゲエに転向。髪もドレッドにして、結果、アッという間に堕ちて消えていった…。上がる時も彗星のようだったけれど、落ちる時も鮮やかに急降下。でもやりたいコトをやっての結果だから、それが潔く見えたりした。

そもそも彼は、生まれがトリニダード・トバゴというカリビアン。10歳で家族とともに渡英し、10代のうちに歌手活動をスタート。76年にビリー・オーシャンの名でデビューし、新興ジャイヴ・レコードから出した『SUDDENLY』が、通算5枚目のアルバムに当たる。が、90年代以降は低迷期を挟み、コレが7年ぶり11作目のスタジオ・アルバム。でも前作『HERE YOU ARE』はカヴァー・アルバムだったから、純オリジナル作品は11年ぶりになる。

リリースのキッカケは、ビリーの大ヒットの大半を手掛けていたバリー・イーストモンドとの再会だ。本作収録曲もすべてビリーとバリー・イーストモンドとの共作で、2人が参加メンバーと一緒に書いた楽曲もチラホラ。いくつかカリビアン・テイストのトラックがあるが、それもバリエーションとして楽しめるレヴェルで、アルバム・トータルではポップなコンテンポラリーR&Bヴォーカル作品になっている。

最近のR&B作品って、良くも悪くもヴォーカルの歌ヂカラで半ば強引に押し切っちゃうトコロがあって、キャッチーな楽曲に寄り添って聴かせるタイプの歌モノが少ない気がしていた。なのでこのアルバムは、そのポケットにすっぽりハマッた感じ。レゲエや打ち込みダンサーだって入っているけど、何だかとっても耳馴染みがイイ。<Daylight>なんて、まるっきりライオネル・リッチー<Dancing On The Ceiling>だし… バック・メンバーに馴染みの名はないが、コーラスにはそれぞれにソロ作があるシャロン・ブライアント、シンディ・マイゼル、ヴァニース・トーマスらが参加している。

ビリーも今年で70歳。ヒゲも髪も真っ白だけど、声は今も伸びやかだ。『ONE WORLD』と掲げているだけあって、緩やかなメッセージを発してもいるけれど、何よりこのポップな佇まいこそがビリー・オーシャンらしい。