kingo hamada_2in1

sparkling☆cherryをサポートして頂いたりしてスッカリ近しい存在になった濱田金吾さんのムーン時代の傑作『midnight cruisin'』(82年/4th)と『MUGSHOT』(83年/5th)が、久しぶりのリイシュー。しかもお得な2in1という形で、金吾さん自身の楽曲解説付き。年季の入ったファンなら01年の再発やその後のベスト盤を持っているだろうけど、昨今のシティ・ポップ・ブーム〜J-AOR人気で金吾ワールドに触れたムキには、まさに絶好のタイミングのリイシューとなる。

80年にデビューし、RCA/AIR〜MOON〜東芝EMIと移籍しながら7枚のアルバムを発表した金吾さん。その筋ではシッカリ存在感を示しながらも、ソロ・アーティストとしての作品リリースは、実質6年間に過ぎない。でも今になって改めて思うのは、どの作品にも必ず名曲と言える楽曲がある、ということ。彼の作風と時代感がマッチしたというか、フォーク・グループからキャリアをスタートして、こうした所へ行き着いたというのは、例えば、弾き語りが似合うシンガー・ソングライターだったジェイムス・テイラーが、やがてザ・セクションを従えてジャズやソウルを引き込みAOR的なステージに立ったこと、あるいはブルースやR&B好きのボズ・スキャッグスが洗練をまとい、やがて都会派AORを歌い始めたのとよく似ている。

金吾さんのキャリアに照らせば、このムーン時代の連作が、一番完成度が高いと言ってイイ。『midnight cruisin'』なんて、本当にタイトル通り、都会の夜闇にシットリ溶け込んでいくような静謐なアルバムで、一編の都市ストーリーを完璧に描き切っている。そうしたスタイルに大きなニーズがあった時代だったのだ。アレンジは全曲、山下達郎バンドにもいた倉田信雄。その編曲センスに惚れ込んでの起用だったそうである。ちなみにココに収録されている<街のドルフィン>は、最近 "Crystal Dolphine"としてUSのNetflixドラマにサンプリング楽曲が使用され、5000万回近い再生数になっているとか…

対して『MUGSHOT』は、同じアーバン路線を貫きながらも、よりバラエティ感を持たせた作品。アレンジも故・佐藤博と山田秀俊が分け合っていて、より動きのある作風になっている。<Girls>の(松下)誠さんのギター弾き倒しとか、めっちゃカッコ良いな。メンバーはどちらも豪華で、クオリティは甲乙付け難し。強いて言えば、どんな時にも聴きやすいのが『MUGSHOT』、特定のシチュエーションにハマるのが『midnight cruisin'』、と言えるだろう。でもキャリア前半でこんなパーフェクトなアルバムが持てちゃうと、今になってなかなか新作へと踏み込めないのも分かる気がするな。

そんなコトを書いててふと思い出した。この金吾さんのムーン期2枚が初CD化された【J-POPシリーズ AOR編】って、実は元々カナザワの提案だったのだ。ラインアップは金吾さんにAB'S3作の初CD化、芳野藤丸ソロ2作、松下誠1st、伊藤銀次1stの再CD化で…。それが企画だけが使われ、予算がない・時間がないと言われて監修を外され、解説もなくなり、コメントさえ使われず、サンプル盤だけ渡されてゴマかされるハメに…。当時はまだ駆け出しライターで、邦楽セクションには人脈などなかった。そんな苦い思い出まで蘇ってしまったな…