fleetwood mac box

ブルース・バンドだった初期フリートウッド・マックの実質的リーダー:ピーター・グリーンが7月末に亡くなったコトもあって、このところ、初時マックの記事をよく見かけていたけれど、実はその前からリリース予定が組まれていたのが、このCDボックス『FLEETWOOD MAC 1969 TO 1974』8枚組である。長いキャリアを誇るだけあって、これまでにも25周年記念の4枚組『THE CHAIN』、50周年記念3枚組『DON'T STOP』といったCDボックスがあったし、複数のオリジナル・アルバムを廉価で抱き合わせた "ORIGINAL ALBUM SERIES" も出ていた。でも今回のは本家ワーナー・グループ企画による本格的オリジナル・アルバム集成。この70年代前半の作品群としては、初めてデジタル・リスマスターが施され、ボーナス曲も各アルバムで合計20曲(追加なしのアルバムもある)。更にボーナス・ディスクとして、74年の貴重なライヴ音源が付いている。

この1969〜1974年のマックというと、ブルース・バンドから脱却してポップ・ロックに接近し始め、徐々にアメリカンナイズされて、やがてスタジアム・クラスのライヴをやる大物へと変貌していく、その進化のプロセスを刻んだ時期。Disc1『THEN PLAY ON』(69年)はピーター・グリーン在籍最後のアルバムで、13年に米ライノが拡大エディションを出した人気盤ながら、加入間もないダニー・カーワンがソングライターとして台頭している。グリーン時代の代表曲<Oh Well>や<The Green Manalishi>はシングルのみリリースで、ここにボーナス収録。

Disc2『KILN HOUSE』(70年)は、カーワンとジェレミー・スペンサーがをイニシアチヴを取ったアルバムで、2人の個性が混在した、興味深くも少々まとまりを欠くアルバム。まだメンバーではないが、ここからクリスティン・パーフェクト(後にジョン・マクヴィーと結婚)がグループに関わっている。しかしこの後カルト宗教に関わったジェレミー・スペンサーが失踪(拉致という話も)。その危機をクリスティンとマック大成功の下地を作った立役者ボブ・ウェルチを迎えて乗り越えていくのが、Disc3『FUTURE GAMES』(71年)、Disc4『BARE TREES』(72年)だ。アートワーク通り、ちょっと淡い色彩感でふわふわしているソフトなアルバムだが、ボブ自身がソロでリメイクする<Future Games >や<Sentimental Lady>はこの辺りに収録されている。

Disc5は73年作『PENGUIN』。アルコール依存症がひどくなったカーワンが馘首され、ボブ・ウェストン(g)とブルース・シンガーのデイヴ・ウォーカー、鍵盤ほかのスティーヴ・ナイが加入。イイ曲もあるが、バンドとしては試行錯誤している感じで方向性が拡散してしまった。結局ウェストンだけがグループに居ついて、5人で完成させたのがDisc6 『MYSTERY TO ME』(74年)。これはバランスの取れたアルバムで、浮遊感溢れるウェルチ作<Hypnotized>が白眉。ヤードバーズ<For Your Love>のカヴァーなんて珍しいトコロをやっている。

ところが今度はウェストンがトラブルを起こして離脱してしまい、残る4人でdisc7 『HEROES ARE HARD TO FIND(クリスタルの謎)』(74年)をリリース。7曲がウェルチ作のポップな作風で、個人的には<Bermuda Trianle>の神秘性が好き。こういうオカルト・ネタは、ソロ転向後の彼の作品へと息づいていく。あまり目立たないが、クリスティンは加入以来、ずーっと“安定のクリスティン”を貫いて。ストリングスとホーン・アレンジはニック・デカロだ。

そして問題のボーナス・ディスクが、『LIVE AT THE RECORD PLANT』と題された、74年12月収録のFM用スタジオ・ライヴ音源である。これは『クリスタルの謎』リリース後に収録した、ボブ・ウェルチ期の集大成。実はカナザワの場合、disc7までの各スタジオ盤はジュエルと紙ジャケですべて揃っているので、このライヴ音源こそがボックス購入の目玉だった。でもその期待は裏切られず、近年やたらと氾濫しているハーフ・オフィシャルとはレヴェルの違う出来栄え。サポート・メンバーなのか、ボビー・ハントという鍵盤奏者がクリスティンのヘルプに。ボブ・ウェルチ好きとしては、この時期の彼のレパートリーが軒並みプレイされて涙チョチョ切れなのだけど、<Black Magic Woman>や<Oh Well>など、ピーター・グリーン期の人気曲もいくつか。しかしこの時期のマックって、ライヴだとオールマン・ブラザーズみたいなアレンジが随所に現れて、思わずニヤリ。これって、この時期この編成ならではの持ち味なのかもしれないな。

US産紙ジャケも最近は出来が良くなったが、解説やブックレットの類いが一切なく、ボーナス曲なんて盤面を見ないと分からないのがちと残念。ヒットがなく、少々粗末に扱われる時期だけれど、バッキンガム=ニックス期しか知らないヒトは、これを機にチェックしてみては?