nick mason

私的ピンク・フロイド祭り2日目。今日はニック・メイスンのソーサーフル・オブ・シークレッツの『LIVE AT THE ROUNDHOUSE』。19年5月にロンドンのラウンドハウスで行われたライヴを、2CD+DVD、Blu-ray、2LPでリリースされた(サブスクでも)。これは本来4月にリリースされるはずだったもので、新型コロナの影響により9月まで延期。それがようやくお目見えしたワケである。発売に合わせて4〜5月に行われるはずだったツアーも10月に順延されたが、いま英国〜ヨーロッパは再び感染拡大になっているから、再度リスケになるのだろうな。

ソーサーフル・オブ・シークレッツのメンバーは、ニック・メイスン以下、『鬱』以降に参加したツアー・メンバーのガイ・プラット(b)に、スパンダー・バレエの中心人物ゲイリー・ケンプ(g)、ザ・ブロックヘッズのリー・ハリス(g)、ジ・オーブやリチャード・ライトとプレイしていたドム・ビーケン(kyd)の5人組。しばらく現場を離れていたリー・ハリスが、友人であるプラットがサポートするデヴィッド・ギルモアのライヴを観に行き、“自分もステージに立ちたい”と、プラットと演奏するチャンスを模索。ギルモアがライヴで取り上げていない時代のフロイド・ナンバーを、ニック・メイスンをフィーチャーしては演るのはどうか?、と着想を得たのが、このプロジェクトの第一歩である(詳細はこちらのオフィシャル・サイトから)

スパンダー・バレエで<True>や<Gold>を書いたゲイリー・ケンプの参加が意外だが、ニュー・ウェイヴ関連のミュージシャンが多いのは、サイケ時代のフロイドをトリビュートするには恰好のフォーマット。セッション・ミュージシャンの集まりではなく、バンド感覚の重要性を知っていたのが幸いした。つまり、譜面通りに昔のままを完全再現するのではなく、各メンバーが自分自身の持ち味や新しいアイディアを織り込んで再構築していく、ということ。メイスンも「このバンドをしばらく演っているようなフリをして、僕たちらしくやればいいんだ」と言ったそうだ。

その最たる例が<原子心母>だろう。オリジナルのフロイド版は、オーケストラや合唱団が入ったシンフォニックな超大曲。それをココでは5人によるバンド・サウンドで、7分程度にまとめて再現している。何でも、ロイ・ギーシンが関わる前のアーカイヴ音源が発見されたそうで、通して演奏していたのはニックとリック・ライトだけだったとか。それをどう再構築するかが、このプロジェクトの方針を定めた。前述のメイスンの言葉も、その時に発せられたものらしい。オリジナル・メンバーのいないトリビュート・バンドはどうしても完成形の呪縛に捉われてしまうが、当時のメンバーを奉じ、しかも当人がフレキシブルなスタンスを持っていると、トリビュート・バンドに新しい解釈を加える自由が生まれる。加えてソーサーフル・オブ・シークレッツは、ギルモアやロジャー・ウォーターズといったガチの看板ではなく、脇役のようなニック・メイスンが主役。演るモノも『狂気』以降のシグネイチャー・ナンバーではなく、シド・バレット時代のサイケな楽曲や、まだ模索を続けていた初期フロイドだ。よほどの狂信的ファンを除けば、新たなチャレンジを受け入れてくれるであろう条件は整っていた。

実のところ、カナザワもまだ映像はロクに観られてなくて、最初に設定された4月の発売前に届いた白盤CD-Rの音源を聴いたのと、発売前にアップされたオフィシャル映像を覗き見しただけ。だけど、いつも仏頂面でドラムを叩いているメイスンが、何やらとても楽しそう。フロイドではスタジアム級の大バコばかりだったが、このバンドでライヴ・ハウスや小さめのホールを周り、バンドで音楽を演奏する楽しさを思い出したに違いない。それこそ、アイ・コンタクトひとつで曲の展開が変化していくような…。

カナザワのチョッとした驚きは、「なぁ〜んだ、ニック・メイスン、ちゃんと叩けるぢゃん…」という大変失礼なモノ。だってフロイドの再結成ツアー以降は、常にセカンド・ドラマー、もしくはパーカッション(しかもドラムに近い役割)がニックをサポートしていて、その頭越しにリズムをリードしていく感じがあって。当のリックはリズム・キーパーに徹し、どうにも存在感が薄かった。だからドラミングも、ひとりじゃちょっとアブナイのかな?なんて… でも決してそんなコトはなかった、と改めて。きっとツアー前にはリハビリに励んだと推察するが、長年コンビを組むプラットが「今の彼のプレイは、今まででサイコー」と言っているので間違いはない。

プレイリストは以下の通りで、初期フロイドを知る人にはお馴染みの楽曲ばかり。でもその中にお蔵入りしていたシド・バレットの幻の楽曲<Vesitable Man>が。16年に出た27枚組ボックス『EARLY YEARS 1965-1972』で初めてオフィシャルにお目見えした曲で、フロイドのコンサートで演奏されたことはなく、唯一BBCライヴでの記録があるだけらしい。それをココで取り上げたのだ。そのニック・ヴァージョンは、ほとんどパンクの衝撃。ヴォーカルもセックス・ピストルズのセンを狙いつつ、ちょっとブライアン・フェリーやデヴィッド・ボウイの要素も入っていたりする。何れにせよ、ロジャー・ウォーターズやギルモアでは、おおよそ考えられないスタイル。こういうセンスが、やっぱりニック・メイスン。過去のリーダー・アルバムを聴いても、実は一番ブッ飛んだセンスと自由な発想を持っていたのだな。

あぁ、早く仕事をやっつけて、映像が観たいわ

[DISC1]
1 Interstellar Overdrive/星空のドライブ(1967『夜明けの口笛吹き』)
2 Astronomy Domine/天の支配(1967『夜明けの口笛吹き』)
3 Lucifer Sam/ルーシファー・サム(1967『夜明けの口笛吹き』)
4 Fearless /フィアレス(1971『おせっかい』)
5 Obscured by Clouds/雲の影(1972『雲の影』)
6 When You’re In/ホエン・ユーアー・イン(1972『雲の影』)
7 Remember A Day/追想(1968『神秘』)
8 Arnold Layne/アーノルド・レイン(1967 1st Single)
9 Vegetable Man/ヴェジタブル・マン(アルバム未発表、The Early Yearsで初収録)
10 If/もしも(1970『原子心母』)
11 Atom Heart Mother/原子心母(1970『原子心母』)
12 If(reprise)/もしも(reprise)(1970『原子心母』)
13 The Nile Song/ナイルの歌(1969『モア』)

[DISC2]
1 Green Is The Colour/グリーン・イズ・ザ・カラー(1969『モア』)
2 Let There Be More Light/光を求めて(1968『神秘』)
3 Childhood’s End/大人への躍動(1972『雲の影』)
4 Set The Controls For The Heart Of The Sun/太陽讃歌(1968『神秘』)
5 See Emily Play/シー・エミリー・プレイ(1967 2nd Single)
6 Bike/バイク(1967『夜明けの口笛吹き』)
7 One Of These Days/吹けよ風、呼べよ嵐(1971『おせっかい』)
8 A Saucerful Of Secrets/神秘(1968『神秘』)
9 Point Me At The Sky/青空のファンタジア(1969 5th Single)




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