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巷で話題のアース・ウインド&ファイアー『JAPANESE SINGLE COLLECTION 〜 GREATEST HITS』、我が家にも届きました。もう何枚もベスト盤・編集盤が出ているアースなので、基本的にレコード会社が勝手に組んだモノはスルーしているが、日本独自企画とはいえ、こうした客観的選曲基準で全盛期を網羅されると、どうしてたって気になってしまう。まさしく今回は、最新・最強ベストと謳うに相応しい、ベスト・オブ・ベストだ。

今回のベストのポイントは、まず Disc 3 に集成されたクリップ集である。もちろん中にはよく見ていた映像やライヴ映像作品からの引用もあるが、これだけまとまったのが嬉しい。初DVD化も4曲ある。更に20曲中16曲が5.1chサランド音源での収録で、これは映像ナシで音だけでも楽しみたいところだ。

2枚のディスクから生る音盤の目玉は、ボーナス・トラックとして収録された<Brazilian Rhyme (Extended Mix)>に尽きる。これを収めた『ALL 'N' ALL(太陽神)』には、ごく短い2つのインタルードが紹介され、どちらも<Brazilian Rhyme>とタイトルされた。この2曲のインタルードは、共にミルトン・ナシメントの75年作『MINAS』がネタ元。2度目に登場する牧歌的なメロディは、ミルトンの代表曲とも言われる<Ponta De Areia(砂の岬)>のカヴァーで、アースの92年のボックス『THE ETERNAL DANCE』では原題通り<Ponta De Areia - Brazilian Rhyme->と表記された。

対して、フィンガー・スナップのフェイド・インで始まりフィリップ・ベイリーのパラッパッパコーラスでお馴染みのアチラは、ミルトン版だと<Beijo Partido>という曲。ブラジルのギタリスト:トニーニョ・オルタの代表曲として知られ、それをミルトンが取り上げたものだ。まったり仕上げなのでチョイ聴きでは同じ曲とは思えないが、ヴァースのメロは同じである。それを英語でリメイクし、モーリスが考えたまったく別メロのスキャット・パートをヒラ歌の前後に加え、4分半のヴァージョンとして完成させている。

ところが最終的に『ALL 'N' ALL』に収録されたのは、そのスキャット部分だけをエディットした1分半にも満たないインタルード。これが巷で知られる<Brazilian Rhyme>である。そうした経緯から、作曲クレジットがミルトンなったり、モーリスになったりと混乱。こちらはボックス『THE ETERNAL DANCE』で<Beijo>と改題され、モーリス楽曲として落ち着いた。今回収録されたのは、そのノー・カットの4分半フル・ヴァージョン。ゼロ年代にヨーロッパ編集のコンピに収録され、アナログ・シングルでも発売。ところがアース本体からのオフィシャル・リリースは今までなく、今回が快挙の初CD化となった。

聞けば、解説を担当した林 剛氏が、この日本盤シングル・コレクション・シリーズの担当A&R氏に提案。海外に打診したところアッサリ使用許諾が出たそうで。押してもダメなら引いてみな、じゃないが、OKが出る時って案外ツルッと簡単に行ってしまうもの。要はタイミング、なのだな。とにかく関係者の皆さん、Good Job です

ただ、アース的には<Ponta De Areia - Brazilian Rhyme->と<Beijo>に区別できたけど、やっぱり世間ではパラッパッパコーラスの<Beijo>こそが<Brazilian Rhyme>なワケで、やっぱりヤヤこしいのは変わらないのかも。このコレクションでも<Brazilian Rhyme>のエディット版としているし。

古くはグランドマスター・フラッシュからブラックストリート、フージーズ、テイク6、ブラック・アイド・ピーズ、メアリー・J・ブライジ、ア・トライブ・コールド・クエスト、ジェラルド・リヴァート辺りがサンプル使用。カヴァーでは何と言ってもマーカス・ミラーのが強力だったけれど、日本では塩谷哲も。最近ではやっぱりコレ、Yuma Hara with T-Groove feat. Hanah Spring のヴァージョンでしょう。既にアナログ7インチは Sold Out らしいけど、現在鋭意制作中というニュー・アルバムにも新ミックスで収録するらしいので、そちらも超絶楽しみ。



0:50過ぎからが、今回の<Beijo>です。