quuen+adam

ローリング・ストーンズ『STILL WHEELS LIVE』、ロジャー・ウォーターズ『US+THEM』、ニック・メイスン『LIVE AT THE ROUNDHOUSE』、そしてチャー『2013 LIVE AT EX-THEATER ROPPONNGI』など、買うだけ買って観る時間が作れない映像作品がドンドン溜まっている。クイーン+アダム・ランバート『LIVE AROUND THE WORLD』もそう。なのでとりあえず画像だけチラ見だけして、まずは音だけ、“ながら” で聴いてみた。

改めて確認したのは、フレディが健在だった頃と現在のアダム・フィーチャーのステージとを比べた時に、違うのはまさしくヴォーカリストが異なるこというコト。もちろん時代経過でセットが新しくデジタル化されていたりはするが、バンド・サウンドそのものに大きな変化はない。アダムも自分の役割をシッカリ理解していて、エゴは剥き出しにしない。フレディの代役を演じるつもりはないが、ファンの期待は裏切らない、そんなスタンスだろう。そもそもフレディとアダムはパフォーマーとしてのセンスに似たものがあるから、アダムが巣のままでステージに立っても、その立ち居振る舞いは自ずとフレディに似ている。だからこそ、ブライアンとロジャーは彼を抜擢したに違いない。ポール・ロジャースと組んだ時とは、まるで意味が違うのだ。

クイーン+アダムとしてのジャパン・ツアーは2回(?)行われているが、カナザワ自身はポール・ロジャースとの来日を最後に足を運んでいない。映画『BOHEMIAN RHAPSODY』公開後の狂騒には距離を取りたかったし、何よりライヴの内容がうっすら見えていた。ポール・ロジャースの時のような、「一体どうなっちゃうの?」のという期待と不安が入り混じった気持ちは抱けなかった。

この『LIVE AROUND THE WORLD』は、まさに、そのクイーンとアダム・ランバートのパフォーマンスをそのままパッケージしたものだ。ココで歌っているのはフレディではないが、アダム自身が意識する・意識しないに関わず、かなりの部分フレディを髣髴させるのは事実である。ファンというのは極めて身勝手だから、勝手にフレディの幻影を求めて、それに合致すれば歓喜するし、違えばバッシングする。ポール・ロジャースと一緒にやって苦労したのは、そこだった。ブライアンもロジャーもロジャースにフレディ的なモノは一切期待してなかったはず。素材としてのクイーン・ナンバーを何処まで彼の流儀で昇華してくれるか、それを楽しみにしていたと思う。ただファンの側の思いはそうではなかった。

そういうプロセスを経て、次にクイーン名義で何かやる時は、フレディに近い見せ方で無理なく自己表現ができる、そういう人が必要だと思っていたにはず。きっと第一候補はジョージ・マイケルだったと推察するが、それがNGとなった時に、アメリカン・アイドルで勝ち抜いたアダムを発見。番組内で初共演し、正式にジョイントし始めて7年が経った。全20曲(映像にはギター、ドラムのソロ・パフォーマンス・パートを追加収録)の中には、ブラジルとポルトガルで開催されたフェス:ロック・イン・リオ、英国で開催されている伝統的なワイト島フェスティヴァル、コロナ蔓延直前の最新ライヴ:豪シドニーで開催の森林火災復興支援チャリティ・コンサート:ファイア・ファイト・オーストラリア 他からチョイスされている。とりわけファイア・ファイト・オーストラリアでは、映画でも話題になった85年のLIVE AIDのパフォーマンスを再現。20分超のステージがそっくり収められた。そしてジャパン・ツアーからは、14年のサマー・ソニック出演から<Now I'm Here><Another One Bites The Dust><I Was Born To Love You>が収録されている。

新型コロナの影響で英欧ツアーが延期されたため、その代わりにファンに届けられるモノを、と企画されたライヴ作品。できることなら、ポール・ロジャースと新録作を出したように、この組み合わせでもスタジオ・レコーディングを期待したいが、果たして…?