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昨日は大きな訃報が入ってしまったが、再び幻のクロスオーヴァー・レーベル:ヴァーサタイルのリイシュー・シリーズに戻って、知る人ぞ知る名ギタリスト:グラント・グリーンの78年作『EASY』。彼のヴァーサタイル移籍第1作目にして、何と生前最後のアルバム。もう少し長生きしてたら、ジョージ・ベンソンを脅かす存在になっていても全然不思議ではないんだけどな。

60年代からブルーノートに籍を置き、多くのジャズ名演を残してきた黒人ギタリスト。でもシーンの変化には人一倍敏感だったようで、60年代のうちからジャズ・ファンク路線に歩みを進め、70年代に入って灼熱のジャズ・ファンク〜艶っぽいメロウ路線を両立させて、会心作を連発した。ちょうどいま話題のLA-BNシリーズに先鞭をつけたような存在。でも実際は、72年録音の超傑作ライヴ『LIVE AT THE LIGHTHOUSE』をLA-BNに残してブルーノートを離れ、CTI/KUDUに移籍して『THE MAIN ATTRACTION』(76年)を制作。CTI入りは本人たっての希望だったというが、移ってみたら実情は違っていたのか、すぐに新興ヴァーサタイルと契約している。ヴァーサタイル上層部には、ヴァーヴやプレスティッジを経てCTI副社長に就いた辣腕主ヴィック・チルンボロがいたから、引き抜きだったのかもしれない。

バックには、ヴァーサタイルのハコバン的存在のホルヘ・ダルト(kyd)にバスター・ウィリアムス(b)、KUDUに多くのリーダー作を吹き込んだハンク・クロフォード(sax)。ホーン隊にはルー・ソロフやジョン・ファディスらの名もある。そしてレパートリーは、コモドアーズ<Easy>と<Three Times Lady>、ビリー・ジョエル<Just The Way You Are>、アントニオ・カルロス・ジョビン<Wave>、そしてウォーレン・ジヴォンがディスコを意識して書いたという<Nighttime In The Switching Yard>など。ビリー・ジョエルにライオネル・リッチーなんて、ベタなバラードが多いぢゃん…、と思われそうだが、多くの曲でイメージにそぐわぬ なかなかに熱い展開が待っていて、ともすると原曲なんて何処かへ飛んでっちゃう。ベンソンとの比較でいうなら、選曲は より万人向き、でもプレイはずっと攻撃的。ベンソンのオクターヴ奏法のようなトレードマークはないものの、オレはスロウを演ってももっと熱いゼ、と言わんばかりだ。あちらよりも低予算、という事情もあるだろう、若干粗めでザラつくストリングスのスウィートニングも、グリーンには返って似合っていた気がする。解体されずに錆びていく機関車にも、何か風情がありますな。

歌モノ中心のベンソンを “日和った” とお感じの向きは、ぜひご一聴を。