george benson in london

ジョージ・ベンソンの2019年最新ライヴ盤が、オランダを拠点にするブルース系ギター・レーベル Provigue から登場した。このレーベルからのリリースは昨年の『WALKING TO NEW ORLEANS』に続くもので、今のところ日本リリースの予定はないようだ。ベンソンのライヴ盤はGRP時代の05年に出した『BEST OF GEORGE BENSON LIVE』以来。あちらは00年に北アイルランドのベルファーストでレコーディングされたフル・オーケストラとの共演ライヴで、『ABSOLUTELY LIVE』なるタイトルでリリースされた映像作品からセレクトされたシロモノであった。

対してコレは、ロンドンの老舗ライヴ・ハウス:ロニー・スコッツでの濃密な実況盤。最近でもジェフ・ベックやノラ・ジョーンズがライヴ作品を録っているレジェンダリーなクラブだが、実はキャパ250人足らずで、ステージとオーディエンスの距離も極めて近いそう。カナザワもベンソンのライヴは武道館やらジャズ・フェスなどで数回観ているが、近年のブルーノート辺りのヴェニュー公演だと、チャージが完全に豪華ディナー・ショー・クラスでとても観に行けない。でもロニー・スコッツ辺りで臨場感満点のステージに接することができるなら、大枚叩く価値はあるのかも。

『WEEKEND IN LONDON』というタイトルは、まさしく70年代の名ライヴ『WEEKEND IN L.A.(メローなロスの週末)』をパクッている。アレはハリウッドのロキシーでのライヴだったが、今作の全体の空気感は、確かにウィズ・オーケストラの05年盤より『WEEKEND IN L.A.』に近い。バックも現在の6人編成のワーキング・バンド+コーラス3人という陣容。マイケル・オニール(g)、スタンリー・バンクス(b)といった古株メンバーもいて、ランディ・ウォルドマン(kyd)が音楽監督を務めている。

「会場の雰囲気をかなり捉えることができたと思う。Ronnie Scott’sはいつでも、誰が演奏するときもそうなんだけど、すごく混んでいる。観客に触れそうな距離で演奏しているし、舞台のすぐそばまで観客がいるんだ。でもそうした雰囲気はいつでも楽しいよ。熱心なファンも多く駆けつけてくれて、黄色い声を上げる女性たちもいた。素晴らしい夜だったよ」(ベンソン)

収録曲は以下の通り。

1. Give Me The Night
2. Turn Your Love Around
3. Love X Love
4. In Your Eyes
5. I Hear You Knocking
6. Nothing's Gonna Change My Love For You
7. Feel Like Makin' Love
8. Don't Let Me Be Lonely Tonight
9. The Ghetto
10. Moody's Mood
11. Love Ballad
12. Never Give Up On A Good Thing
13. Affirmation
14. Cruise Control

前作『WALKING TO NEW ORLEANS』からの渋いカヴァー・チューン<I Hear You Knocking>やGRP時代に取り上げたジェイムス・テイラー作<Don't Let Me Be Lonely Tonight>などもあるが、やはり中心は76年から20年近く続いたワーナー期、しかも前半10年に集中していて、ほぼ全編 歌モノが占める。もちろん楽曲よってミュージシャンのフィーチャー度が高かったりはするが、いわゆるインストは出世作『BREEZIN'』からの<Affirmation>のみ。せっかくの伝統的ジャズ・クラブ公演、しかもリリース元はギター指向のレーベルなのだから、もっとギター・インスト中心になるのを期待したが、やっぱり中身はほぼいつものベンソンなのね。

年齢のせいか、ベンソンも多少声が荒れたりするし、選曲ももうひと捻り欲しかったが、今の彼の集大成的ベスト・ライヴとして安心の出来栄え。当人も自信が持てる内容になったからこその、このタイトルなのだろうな。