tom browne 2020

ジョージ・ベンソン、ボブ・ジェームス(&ティル・ブレナー)と、フュージョン系大御所の好作が続いたので、今回もその手で。<Funkin' For Jamaica>でお馴染みの黒人トランペット奏者トム・ブラウン、今月頭に到着したばかりの最新作『COME WHAT MAY』をご紹介。死の淵に立ってガンと闘っていた愛妻が病気を克服したそうで、その感謝の気持ちを込めて、このアルバムが作られた。

作品としては、17年にリリースした『LEGACY』以来のニュー・アルバム。しかしあれは自主制作で、打ち込み中心のスムーズ・ジャズ仕様。それなりに凝った作りのマテリアルもあったけど、大きな収穫はジョイス・サン・マテオというオランダ人女性シンガーくらいで、少々喰い足りなさがあった。だから今作にはあまり期待してなかったが、精神的安定があったせいか、なかなかに充実した濃ゆい内容で。リズム・トラックは今回も基本的にプログラムだが、必要に応じてギターやサックスを入れたり、ベース・ギターに差し替えたりして、ドッシリとした重量感、ベテランらしい風格がある。

カテゴライズすれば、クロスオーヴァーもフュージョンもスムーズ・ジャズも、今やすっかり同義語。その音は時代の流れと共に画一的になり、軽量化していく。でも今作は、その時間軸を古き佳き時代に差し戻したような、そんな感覚。もちろんかつての若々しい迸りは、円熟のプレイへと擦り替わっちゃいるが…。

リード・ヴォーカルは前作同様ジョイス・サン・マテオ。しかもフィーチャー度は更に上昇し、艶っぽさを増している。収録曲にはヒートウェーヴのカヴァー<The Groove Line>も。また<Angels We Have Heard On High(荒野の果てに)>は賛美歌から。ゲストでボブ・バルドウィン(kyd)の名もある。

詰まるところ、オケが生のバンド・サウンドであれプログラミングであれ、真剣に作品作りに取り込めば、そのスタンスは自ずと音に表れるということ。ラジオでのオンエアを稼ごうという邪念こそが、作品のクオリティを貶めるのだよ。