dirty loops_phoenix

一世を風靡したデビュー・アルバム以来、6年ぶりのダーティ・ループス新作登場。でも新曲5曲(+ボーナス・トラック4曲)というヴォリュームだから、果たして2ndアルバムと呼んでイイのかどうかはチョイ疑問。実際、前作の成功を受け、2作目のレコーディングに入ったもののメンバーの方向性がまとまらず、制作が一旦棚上げされたとも聞く。その間にベースのヘンリクが兄弟プロジェクト:リンダー・ブラザーズでアルバムを出したり、vo/kydのジョナ・ニルソンがソロ・ツアーを始めたり…。でもそうやって各々の時間を作ったことが功を奏し、徐々にバンドに向かうモチヴェーションが上がってきたのだろう。それがこうして、ひとまずカタチになった。

ご存知のように、スウェーデンの王立音楽学校で知り合った超エリート・ミュージシャン集団であるダーティ・ループス。メンバーは互いの必要性を重々承知しているから、それぞれソロ・キャリアの追求に走らない限り、解散することは考えにくい。でもその一方で、個々の音楽性が確立されているので、擦り合わせというか、今後のディレクションとして3人が一致するポイントを見つけることは容易ではない。しかも、世界的にはコンテンポラリー・ジャズ・ユニットとして扱われているのに、人気アニメとのコラボレイトでティーンエイジャーに向けて超絶技巧のポップ・ユニットとして売り出し、それを成功させた国もある。人気が出るのは良いコトだけど、これではピュアな音楽ユニットであるはずの彼らに迷いが出るのは当然だろう。それをリセットするための、この長期インターヴァル。デビュー時のダーティ・ループスをアイドル視していた中高生たちの多くも、もう大学生や社会人。アニメに釣られたファン層も大きく入れ替わり、嗜好も変わっている。バンドとしては、ココからが正念場と言えるのだ。

…とはいえ、彼らの音楽性自体が大きく変化したトコロは見当たらない。聴き手を張り倒すような圧倒的迫力は薄まったものの(コチラが慣れたことも大きい)、少し落ち着きが出て懐が深くなった。それでいて、プレイの音数、ジョナの超絶ハイトーン・ヴォイスといった武器に、衰えはない。言うなれば、その武器を のべつ幕無し振りかざすのではなく、使いどころを弁えたというか。それがホントの “天下の宝刀”。平時の表現力を磨いてこそ、そうした武器が活きてくる。

バンドの帰還を高らかに宣言する<Rock You>、津軽三味線みたいなイントロにファンク・ビートが絡んでくるグローバルな<Work Shit Out>、マイケル・ジャクソンが嫉妬しそうな<Next To You>、しなやかに聴かせる<World On Fire>、何処かTOTOの『FAHRENHEIT』や『THE SEVENTH ONE』を髣髴させる<Breakdown>と、どれも聴くほどに魅力が増すトラックばかり。コケおどし的ニュアンスの縮小と共にオドロキの瞬間は減ったものの、他ミュージシャンへのアピール(プロ/アマ問わず)、若い世代へのインフルエンサーぶりは俄然高く、注目度はジワジワ上がってくるに違いない。対して<Work Shit Out><Next To You>は去年先行リリースされていたから、熱心なファンには新曲が少なく物足りなさが先に立つだろう。インストばかりのボーナス曲も、お気楽に作った感が強く、ここでは外して考えたいところ。

それでもバンド側は焦らず、ジックリと間をとって、自分たちらしい作品を送り出した。それを許容できるか否かが、海外と日本の音楽シーンの大きな差のひとつかもしれないな。