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山下達郎の2020リマスター版『POCKET MUSIC』と『僕の中の少年』が我が家にも。同発アナログ盤は取り敢えず購入を見合わせ、まずはリマスター効果を確かめるべく、どちらもCDのみゲット。内容は言うまでもなく、いずれも高レベルの名盤。特に自分は『POCKET MUSIC』の小振りな感じ、『FOR YOU』の極彩色とは正反対の、パステル・カラーにして小品集というテイストが大好きで。制作自体はコンピュータ・ミュージック移行期の労作として有名だけれど、作品的・音楽的には、内省に転じた『MELODIES』の流れをシッカリ定着させた意義深いアルバムだったと思っている。『僕の中の少年』は、何と言っても<ゲット・バック・イン・ラヴ>と<蒼氓>が入っているし。

で、今回のリマスター。薄皮が一枚剥がれた感じがあって、低音が迫り出してくると同時に奥行き感が増しているようだ。より聴きやすくなったのは間違いないが、個人的には期待したほどの差はなかったような…。トコトンこだわる達郎さんだから、そもそもの音のクオリティがハンパないし、86年発表の『POCKET MUSIC』は当時のデジタル・サウンドに我慢ならず、91年に一度リミックスしているワケで。今回の2020リマスターも、その91年リミックスがベースになっている。だから劇的な進化は、ハナから存在しな得なかった。

ではアナログ盤はどうだったんだろう? 自分はどちらもオリジナル・アナログ盤を持っているので、買い直すべきかどうか、実はチョイと悩んでいる。1枚モノならともかく、どちらも2枚組になっているので、それなりのコストがかかるのだ。

そこで疑問が湧いてくる。達郎氏は、昔と同じ1枚モノにすると音質的に納得できない、というコトで、最近のアナログ・リイシューはいつも2枚組でリリースしている。では納得できない具体的な理由、2枚組になってしまうワケはどこにあるのか? 考えられるのは、第一にアナログ時代のような優れたカッティング・エンジニアが不在ということ。第二に最新マスタリングによって音圧が上がり、グルーヴ(盤面の溝のこと)にゆとりが必要になったということ。どちらかではなく、その両方が理由かもしれない。

だとしたら、かつて1枚だったモノが2枚組になってしまうのは、技術レヴェルの劣化が原因か。あるいは所詮アナログの限界なのか。後者なら仕方なく2枚組を購入するが、もし前者なら、アナログに関してはオリジナルを持ってればそれでイイぢゃん、なんて思ってしまう。仮に最新マスタリングをアナログ1枚に収めたら、音圧の高いところで針飛びしちゃうようなモノしか作れない、ってコトなのかしら? これは何も達郎さんだけじゃなく、バンバンとアナログ復刻されている他のアーティストも同じこと。実はリマスター音源で1枚モノというパターンが多いから、果たして実際にオリジナルより音質が良くなっているのかどうか、いつも疑問に思って手を出さない。元の音は確実に良くなっていても、それを盤に刻めないなら、買い直す意味はないってコトになる。

そういえば少し前に、USでアナログの売り上げがCDを抜いた、なんてコトが業界ニュースになっていた。かくいう自分もアナログに愛着を持つ人間だけれど、現状、新譜ならCDが出ていればまずCDをゲットし、その上でアナログ盤で聴きたければ更に買い足す。将来的には、デフォルトがストリーミングで、フィジカルはアナログのみ、なんて時代が来るかもしれないな。