robert john

世にも厳しい2020年も、とうとう12月に突入。以前からお知らせしているカナザワ監修、ユニバーサルミュージック『初CD化&入手困難盤復活!! AOR ~ Light Mellow 1000』のリリースが迫ってきた。そこで今日からは、シリーズの注目盤/注目アーティストにスポットを当てていくので、しばしお付き合い合いのほどを。まず最初は、待望の世界初CD化となるロバート・ジョン『ROBERT JOHN(ジェントル・タッチ)』のご紹介です。

ロバート・ジョンと聞いて、我々AORファンが真っ先に思い浮かべるのは、79年10月に全米首位になった<Sad Eyes>。そしてトーケンズの全米No.1ヒット<The Lion Sleeps Tonight(ライオンは寝ている)>のカヴァー(72年/全米3位)だ。でも実際は、何とまだ12歳だった50年代終盤に、本名ロバート・ペドリックJr.名義で全米ヒット(最高74位)を放っていて、美しさと力強さを兼ね備えたハイ・テナー・ヴォイスで評判に。地元ニューヨークのブルックリンにある小学校代表として、カーネギー・ホールで歌ったこともあったらしい。

その後も本名だったり、ドゥワップ系ヴォーカル・グループだったりでレコードをリリース。声変わりを機にファルセット・シンガーにシフトし、併行して旧友マイケル・ゲイトリーと一緒に曲を書き始めた。そしてソングライターとして音楽出版社と契約すると、そこから新たなソロ契約への道が開かれて、68年にロバート・ジョン名義による『IF YOU DON'T WANT MY LOVE』で米コロムビアから再デビュー。タイトル曲は全米49位のスマッシュ・ヒットになった。しかし後続はなく、A&Mやアトランティックなどレーベルを転々。そのプロセスで<ライオンは寝ている>が当たったのだが、コレは元々ルー・クリスティが歌うはずだったものを、彼女のドタキャンで代わりに歌った、というのが真相。そのためレーベルからのフォローはなく、アルバムも作ること叶わずで、失意のロバートは音楽業界から離れてしまった。

それから数年。かつて一緒に仕事をしたことがあるプロデューサー:ジョージ・トービンからの依頼で、アリオラ・アメリカにシングル<Give A Little / Poor Side Of Town>を吹き込み。これは不発に終わったが、それが呼び水となって、翌79年にこのアルバム『ROBERT JOHN』が誕生する。No.1シングル<Sad Eyes>は、トービンが、当時ヒットしていたトビー・ボー<My Angel Baby>みたいな曲を書けと、ロバートを促したモノだったらしい。

プロデューサーのトービンは60年代から活動し、スモーキー・ロビンソンやナタリー・コール、コモドアーズ、キム・カーンズ、テルマ・ヒューストン、AORではジョン・ヴァレンティなどを手掛けた人。レコーディングには参謀役マイク・ピシリロ(g)以下、エド・グリーン(ds)スコット・エドワーズ(b)らが参加。名手ハル・ブレイン(ds)、ヴォーカルのダーレン・ラヴ&エドナ・ライトらの参加は、如何にもブリル・ビルディング人脈に縁のあったロバート・ジョンに相応しいキャスティングと言える。

アルバムを聴けば、トービンが業界を離れていたロバートを引っ張り出した理由がすぐ分かる。要は、彼の舞い上がるような美声ファルセットで、ひとりビー・ジーズをやりたかったのだ。でもピシリロ作品を中心とした収録曲群のデキがなかなか良く、すぐにビー・ジーズ云々はどうでもよくなってしまう。サウンド・ディレクションの元ネタは確かにそうだったかもしれないが、それを「アイツに歌わせたいッ!」と思いついたところがプロデューサーの慧眼。そこへ少々ティン・パン・アレーのノスタルジック・フレイヴァーをまぶした。<Sad Eyes>に続くシングル<Lonely Eyes>も、トップ40入り目前までチャートを上がっている。終盤のメロウ・ミディアム<Only Time>も、本家<How Deep Is Your Love>に負けない隠れ名曲だ。

今回が世界初CD化というコトで、再発シリーズ『AOR ~ Light Mellow 1000』の中でも好調に予約を伸ばしている様子。次作『BACK ON THE STREET』はCD化されていたのに、コチラは永らく取り残されてベスト盤に収録の5曲のみ、みたいな形だったので、当然と言えば当然。けれど、TOTO / エアプレイ一派ばかりが持ち上げられがちな日本のAORシーンにあって、このリアクションはとても嬉しい。かくいう自分だってTOTO / エアプレイで青春(?)を過ごしたクチだけれど、それが過ぎたためにAORが誤解を受け、しばらく軽い扱いに甘んじたのもまた事実だ。だからそれを是正し、ニュートラルなシーンにしていくのが、いま進行中のディスクガイド・プロジェクト『AOR Light Mellow Premium』の存在意義でもあると思っているのよ。

初CD化&入手困難盤復活!!『AOR ~ Light Mellow 1000』
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