jon anderson

イエスのシンガー:ジョン・アンダーソンが30年越しで制作していたソロ大作『1000 HANDS』。昨年自身の公式サイトで限定リリースされていたものが、今年夏にようやく一般リリースされた。少し遅れてゲットしたが、その壮大でチカラの籠った作りに「もう少しジックリ聴き直して…」なんて思っていたら、早2ヶ月が経ってしまった。でもコレ、ファンの間では、ジョンのソロ作群でNo.1、なんて呼び声も出ている作品なのだ。

ソロ名義としては、2011年の『SURVIVAL & O THER STORIES』以来8年ぶりとか。でも個人的には、彼のソロは80年代末以降ロクに追っかけていなかったので、オンタイムで聴くソロ作というと、88年の『IN THE CITY OF ANGELS』以来かも。それでもココ数年は、ジャン・リュック・ポンティとのアンダーソン=ポンティ・バンドや、分家のイエス feat.アンダーソン, ラヴィン, ウェイクマンを楽しんだので、個人的にはお久しぶり感などないのだが…。

実際の内容も、ソロ・アルバムというにはあまりの壮大でスケールが大きく。故クリス・スクワイア(b)、アラン・ホワイト(ds)ら、当時のイエス・メンバーの協力の下で90年代から始動していた “Uzlot” なるプロジェクトのマテリアルをベースにしているそうだが、制作コストが膨らみすぎたのか、途中で頓挫したらしい。

でもシンフォニックな構成は、まさにイエスの中心人物にふさわしいもの。クラシック、バロック色が濃厚で、ロックというより、今でいうクラシカル・クロスオーヴァー的なサウンドだ。そこへジョンが得意とするフォークやトラッドを絡め、時にジャズのヴァイブまで。ジョンに似たシンガーを入れてセルフ・コピーと再生産を続ける本家イエスより、よっぽどリアルなプログレッシヴ・スタイルを打ち出している。ジョンの美少年ヴォイスをルーパーに入れて多重コーラスを形成しつつ、打ち込みドラムの上で生バンジョーと共にリフを成し、サンプリングと思しきシタールのドローン弦をビヨ〜ンと響かせる。大正琴やハープ、ハーディ・ガーディみたいな音も鳴っているようだし、曲によってはウクレレもポロン

参加ミュージシャンも膨大な数だが、単に頭数が多いだけでなく、ジャンルを超越した異種交配が縦横無尽に。ギターだけで、スティーヴ・ハウ、リック・デリンジャー、ラリー・コリエル、スティーヴ・モーズ、パット・トラヴァースら8人、ドラムにアラン・ホワイト、カーマイン・アピスにビリー・コブハム、鍵盤にはジョナサン・ケインにチック・コリア、フルートにイアン・アンダーソン(Jethro Tull)、サックスにチャーリー・デシャント(Hall & Oates)、ホーン隊にタワー・オブ・パワー、ヴァイオリンにジャン=リュック・ポンティ、ジェリー・グッドマン(Ex-Mahavishunu Orchestra)、ロビー・スタインハート(Kansas)、そしてザップ・ママ(back vo)等なども。その他 楽曲ごとに異なるクワイアが参加しており、そのシンガーの数は優に述べ50人を超えている。

アレンジ&プロデュースは、ジョン自身とマイケル・フランクリンというTV音楽を数多く手掛けている人。それよりニヤリとさせられるのは、多くの楽曲をジョンとブライアン・チャットンが共作していること。チャットンは、イエス結成前のジョンとザ・ウォリアーズなるバンドを組んでいたkyd奏者で、そのメンバーには後にキング・クリムゾンに加入するイアン・ウォーレス(ds)、トニー・ケイとバジャーを組むデヴィッド・フォスター(b / 同名異人)がいた。その後チャットンは、フィル・コリンズがいたフレミング・ユースを経て、ザ・ナイス(キース・エマーソン!)のベース:リー・ジャクソン率いるジャクソン・ハイツに加入。そこで親しくなったのが、後にヴェイパー・トレイルズを組むジョン・マクバニーだったりする。

ジョンの『IN THE CITY OF ANGELS』にTOTO勢が参加したのは、スティーヴ・ルカサーがレコードを発売日に並んで買うほど熱心なイエス・ファンだったことが背景にあったらしいが、こういうアルバムを聴くと、小さなジャンル分けに捉われる馬鹿馬鹿しさを痛感する。まずはこの、スピリチュアルかつ幻想的な音絵巻がジックリ堪能してみては?