kalima

ポスト・パンク世代のUKグループ、カリマの86年1st『NIGHT TIME SHADOWS』が紙ジャケ・リイシュー。併せてカリマの2nd、前身であるスワンプ・チルドレン『SO WHAT』も同時復刻され、少し遅れて年明けには、カリマの3rd『FEELING FINE』がライナップに加わる。そう、ちょっとしたカリマ祭り。彼らに対してはそれほど深い思い入れはないものの、この『NIGHT TIME SHADOWS』は当時カセットに録音して、チョクチョク聴いていた覚えがある。だから懐かしいんだけど、いま聴いたって古くはないのだな、コレが。

AORが急速に衰退していった80年代中盤、自分はCCMにその影を求めつつ、表向きは都市型ソウル、当時でいうブラック・コンテンポラリー系を中心に聴いていた。英国方面ではネオアコ系が注目されていたけれど、その素人っぽい音作りに合点がいかず、スタイル・カウンシル以外からはチョッと距離を取っていた記憶がある。そんな中、ジャズやソウルの匂いを纏って近づいてきたのが、シャーデーとワーキング・ウィーク。そしてそれを追うように出てきたのが、このカリマだった。確か先に12インチを聴いて、「いいネェ」なんて友人と話していたら、フル・アルバムが出たんじゃなかったか。

ア・サーティン・レイシオのメンバーの多くが参加したことでも知られるカリマだが、シャーデーやワーキング・ウィークと違って、ソウル・エッセンスは薄い。だからカリマに落ち着けなかったメンバーは、後にスウィング・アウト・シスターに参加したりも。その代わりにボサノヴァやラテンのエッセンスが効いていて…。つまりは総じてラウンジーなジャズ・スタイルが前に出て、オシャレ要素が強くなっている。ネオアコ勢もボサを積極的に取り入れていたけれど、ヘタッピなのを飾らずそのまま見せるのがポスト・パンクのスピリット、できるだけ自らの中に昇華して装い新たに提示するのがジャズ・バンドを目指した彼ら、というコトかもしれない。

ちなみに今回の紙ジャケ復刻版では、ジャイルス・ピーターソンもお気に入りという12インチ・シングル6曲もボーナス追加。ちょうど『AOR Light Mellow Premium』の続編を制作中で、シャーデーに代表されるオシャレ系UKアーティスト群の扱いをどうすべきか考えあぐねているのだけど、彼らのスタイルもまた リアルなクロスオーヴァーの行き着く所だから、やっぱり無視はできないな…。