billy joel_ turnstiles

制作中のガイド本『AOR Light Mellow Premium 02』に掲載するアルバム選考中。この手のガイドを作るのに、一番手間が掛かるのはもちろん執筆だけれど、実際のキモは、何(誰)を載せるかと、選んだ作品をどう見せるか。購入してくれた人も、紹介文を読み込んで意図を理解してくれる人は意外に少なく、パラパラとページを繰って何が載っているかで判断されがち。個人的に一番ツマラないと思っているのが、アルファベット順での掲載で、折角ひとつの斬り口でチョイスしたものが、時間の流れや当時の空気、先行アーティストや周囲の影響など反映できずに辞書のようなカタチになってしまう。アーティスト個々の進化や変化は理解しやすいものの、それは今ならネットの音楽系データベースを当たれば簡単に分かる。収録曲や参加ミュージシャンといった作品情報も、また然り。それより何より、当該作をオンタイムで享受した者にしか伝えられないコトが、他にもたくさんあるハズなのだ。

…んなコトを考えながら、ビリー・ジョエル。以前から書いているように、「ビリー・ジョエルはAORか?」という命題がありつつも、そこは、「楽曲/作品によってAOR的要素を兼ね備えたポップ・ロック系シンガー・ソングライター」とカタがつく。TOTO/エアプレイ偏向のAORファンは、そもそも彼をAORに入れようとしないが、それは当時の空気として理解できる。ある意味マニアックなオトナのジャンルだから、万人向けのビッグ・ネームは、何かと理由をつけて遠ざけられてしまうものだ。でもそれを出来るだけ広く捉え、同じ感性で楽しめるものは対象としていくのが、『AOR Light Mellow』のモットー。40年前の時代感を事実や経験として伝えるコトは必要としても、その主張をそのまま受け入れられるのは、同世代だけではないか。

何れにせよ、ビリーをAORとして扱う時のコンセンサスは、大出世作『THE STRANGER』(77年)。ココに意を唱える人は、まずいないだろう。ではもう1枚となると…?

まぁ普通なら、後続作で、内容的にも『THE STRANGER』を踏襲している『52nd. STREET(ニューヨーク52番街)』を選ぶ。好バラード<Honesty>、緻密なアレンジで群を抜いている<Zanzibar>も入っている。でもそうした無難な選択より、こういう機会だからこそ、普段はこの2枚の陰に隠れがちな『TURNSTILES(ニューヨーク物語)』を推すべきなんじゃないか。何と言っても代表曲のひとつ<New York State Of Mind>所収だし、60's テイストのヒット曲<Say Goodbye To Hollywood>もココ。そして隠れたエレピ名曲<James>も。AOR指数だって、全方位的とも言えそうな『52nd. STREET』より高く、アーティストとして進化中の訴求力がある。だから、フラットな感性でビリーの作品を語れる今ならば、『TURNSTILES』もアリかな?と考えている。

もちろん、全体のページ割りの中で考えなければならないので、ココで結論は出せない。けれど、伝えるべきリアルタイムの感覚と40年後の現在のスタンス、そのバランスだけは忘れないようにしないと。