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モータウン系アーティストを続けて。可憐な歌声のダイアナ・ロスは、もともとシュープリームス時代から黒人音楽のクロスオーヴァー・ヒットを狙うモータウンのシンボルのような存在だったが、ソロになってそれに拍車が掛かり、特にバラードで多くのヒットを放った。1枚選べと言われたら、シックと組んだ80年作『DIANA』が個人的なフェイヴァリット。でもAOR路線なら、まずはTOTOがほぼ全員参加した77年作『BABY IT'S ME』か。レイ・パーカーJr.やマイケル・オマーティアン、リー・リトナー、トム・スコットらが参加し、スティーヴィー・ワンダー、トム・スノウ、メリサ・マンチェスター、キャロル・ベイヤー・セイガーなどが楽曲提供している。

ただ実際のところは、ソロ初期のモータウン・スタイルから踏み出したばかり。リチャード・ペリーのプロデュースによるアダルト・ポップ路線で、ソロ・アーティストとしては成長過程にある印象だ。だから『AOR Light Mellow Premium 02』には、80年代作品群からも1枚選んでおいた方が良いかもしれない、という気がしている。自分自身、ダイアナをアルバム単位で聴くようになったキッカケがシックとの邂逅だったから、遡る形で知った70年代作品とは思い入れが違うのよ。

そこで浮上するのが、この83年作『ROSS』だ。前作『SILK ELECTRIC』でもデヴィッド・ロバーツの楽曲を取り上げたり、その後もダリル・ホールやビー・ジーズとコラボしたりするダイアナながら、AOR作品として考えるとどれも薄味。結果、ゲイリー・カッツがメイン・プロデュース、レイ・パーカーJr.が2曲、ダイアナ自身が1曲プロデュースしたコレが浮上してくる。ドナルド・フェイゲンやマイケル・マクドナルドに曲を出してもらい、演奏やバックヴォーカルにも参加させるあたりは、さすがゲイリー・カッツ。TOTO勢にラリー・カールトン、グレッグ・フィリンゲインズらの参加に加え、マーク・ジョーダンも楽曲提供している。

ただしゲイリー・カッツはコーディネイト型のプロデューサー。編曲や演奏など細かい部分には口を出さない。そうした「引き」の美学がダイアナとうまく噛み合ったとは言えず、アルバムとしての完成度はボチボチ、といったところ。が、シンガー・ソングライターのデボラ・アレンが当時の夫レイフ・ヴァン・ホイらと書いた<You Do It>、同じくシンガー・ソングライターのピーター・アイヴァースが作詞家フラン・ゴールドと共作した<Let's Go Up>など素晴らしい曲もあり…。フェイゲンやマイケル・マクドナルドらの看板曲は正直物足りないのだが、脇役が意外にアルバムを盛り立てている。逆にまったくブレないのは、レイ・パーカーJr.の2曲で、<Woman Needs Love>や<Mr.Telephone Man>、<The Other Woman>の世界がココにも。笑っちゃうくらい変わらないのは、シグネイチャというより、このパターンしかできないから? シンガーに合わせてサウンドを変化させるのではなく、自分のスタイルにアーティストを乗せる。このやり方だと、制作者としては長続きしないんだけどな…。

結果ダイアナのセルフ・プロデュースによる<Girls>(ダイアナとマーク・ジョーダン他共作)が、一番この頃の彼女っぽい、というオチが… でもスルーしてしまうには、かなり勿体ないアルバムです。