auracle

知られざる好フュージョン・バンド、オーラクルのデビュー盤(78年)が、韓国 Big Pink 発で紙ジャケCD化されていました。これはその国内流通仕様盤。元々は、80年代前半にチック・コリア周辺で活躍していたサックス/フルート奏者スティーヴ・クジャラの出身バンドとして知ったが、彼と一緒にツー・トップを担うトランペット奏者リチャード・C・ブラウンが、90年代に入ってスムーズ・ジャズの人気奏者リック・ブラウンになると分かったのは、ずーっと後になって。ブラウンは84年にリック・ブローンなる名義でAOR系ヴォーカル・アルバムを出しており(日本のみだが、そこそこ好盤)、結構ユニークなキャリアを持っている。

さて、このオーラクルは、6人編成のクロスオーヴァー/フュージョン・バンド。だがクジャラ&ブラウンの2管にベース、ドラム、キーボード、それに加えてヴァイヴ&パーカッショ奏者が在籍するギターレスのメンバー構成がユニーク。プロデューサーがマイルス・デイヴィスで有名なテオ・マセオ、というコトで、一部ジャズ・ファンにも注目されたようだ。でもそのサウンドは、ホーンとヴァイヴ、パーカッションが気持ち良く鳴るクロスオーヴァー志向。なるほど、無名の割に中古盤がゴロゴロしているのは、日本盤が出ていたのに加え、マセオの名でシリアスなジャズを期待した硬派ファンが、音を聴いてから一斉に背を向けた証しなのかも。

逆にそれを聞いてクロスオーヴァー好きがピーンと来るのが、初期スパイロ・ジャイラへの意識だ。実際オープナーの<Columbian Bubblegum>を聴くと、そのベクトルがよく分かる。何よりサウンド・メイク、楽器の音や耳触りがとても近くて、思わずエンジニアやスタジオ名を確認してしまったほど。音楽的にはオーラクルの方がジャズ寄りで、スパイロ・ジャイラ<Morning Dance>の万人向けキャッチーさは乏しい。でも78年という時期を考えれば画期的に取っ付きやすかったハズで、ウルサ型ジャズ・ファンからの期待値の高さが逆にアダになってしまった気がする。そういう意味では、デビューが少し早すぎた。

現に78年というと、スパイロ・ジャイラはまだ本格的デビュー前。自主制作の1stを出したのが77年で、出世作『MORNING DANCE』は79年だからまだ出ていない。従って同系グループへの影響力なんて、まだ持っていなかったのだ。とはいえ彼らはニューヨーク州バッファロー出身。オーラクルは同州ロチェスターにあったイーストマン音楽学校の卒業生が組んだグループ(=スティーヴ・ガッドの後輩)なので、活動エリアは被るから、ローカル・バンド時代から互いに音楽的交流があった可能性が高い。オーラクルがデビューのキッカケを掴んだのも、より遠方のインディアナにあるノートルダム大学のジャズ・フェスティヴァルに出演して好評を得たからだとか。ロック色の強いクリサリスが契約したというのも、ウェザー・リポートやリターン・トゥ・フォーエヴァーの当時の人気を当て込んで、と思われる。変拍子と鉄壁の高速ユニゾンを披露する<Sleezy Listening>なんて曲は、そうしたジャズ・ロックのニュアンスが濃厚だ。

つまりオーラクルは、初期スパイロ・ジャイラのソフト・サイドと、ウェザーやRTFのハード・サイドを併せ持ったバンド、ということ。だからもしクリサリスではなく、ジャズ・フュージョンに強いレーベルに所属していたら、オーラクルももっとうまく売り出されていたかもしれない。解散の事情は分からないが、もしスパイロの<Shaker Song>のようなキラー・チューンがあったなら、アルバム2枚で早々に瓦解せず、もっと長続きしていたかも。