kellee patterson 3

72年に黒人女性として初めてミス・インディアナに選出されたという才色兼備のシンガー、ケリー・パターソン。彼女の代表的アルバムというと大抵は、Black Jazz Labelからスピリチュアル・ジャズ路線で出したデビュー作『MAIDEN VOYAGE』(71年)が挙げられてきた。タイトル曲はもちろん、ハービー・ハンコック<処女航海>のカヴァーである。しかしその後はカリフォルニア拠点のレーベル Shadybrookに移籍。76年『KELLEE』、77年『TURN ON THE LIGHTS - BE HAPPY』、79年『ALL THE THINGS YOU ARE』の3作を立て続けにリリースした。この3枚は中古レコード店では頻繁に目にする定番安レコだけれど、何故か銀盤化は進まず、今回ようやく世界初CD化。その中から一発、年増のオバサンに見えてしまう前後作より、ひときわカワゆい真ん中の作を。

Shadybrookへの移籍第1作『KELLEE』は、バリー・ホワイト、ジャクソン5、グローヴァー・ワシントンJr.、ビリー・プレストン/ジョー・コッカー、オージェイズ、スタイリスティックス、ドリー・パートン/オリヴィア・ニュートン・ジョン、ロギンズ&メッシーナらの楽曲を取り上げたカヴァー・アルバムで、それまでのジャズ・シンガー的イメージがつきまとった内容に。でも続くコチラ『TURN ON THE LIGHTS - BE HAPPY』は、プロデュース&アレンジを兼ねるラリー・ファーロウ作のオリジナル楽曲がズラリ。しかも、スタジオ・ライヴ然としたシンプルなサウンド・メイクの前作に比べ、ストリングスやホーン・セクションを効果的に配したゴージャスな作りになっている。

ケリーのヴォーカルは、デニース・ウィリアムスやミニー・リパートンに通じるキュートな歌声が魅力。それでいて、彼女たちのキーを少し下げたようなニュアンスが特徴的である。ミス・イリノイで10代の頃からTVに出演していた派手なキャリアとは裏腹に、実はシッカリと唄える実力派なのだ。当時はアチコチのメジャー・レーベルからデビューの話が持ち込まれたらしいが、それらを蹴って、アフロ・アメリカンなジャズ・アプローチを示していた Black Jazzと自ら契約を選んだというからホンモノである。

そこでこの移籍第2作目(通算3作目)では、ハッキリとソウル路線を打ち出した。それでも、いわゆるヒット狙いのポップ・ソウルではなく、浮ついたところのない、真っ当で実直なソウル・ジャズ・ヴォーカル作品。分かりやすくいうと、マリーナ・ショウ『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』をグイッとソウル寄りに展開した、と言うか。ケリーの可憐な歌声は、やっぱりジャズ・ヴォーカルよりコチラの方がシックリくる。

デヴィッド・T・ウォーカー(g)、ジェイムス・ギャドソン(ds)、デヴィッド・シールズ(b)にファーロウ(kyd)というリズム・セクションも、マジ好演連発。タイトル曲は近年のクラブ・シーンで人気があるそうで、グルーヴィーなメロウ・ソウル<Let's Hold On To Love>、しっとりとした<Yesterday Was Love>もなかなか聴かせる。擬似ライヴのエンディング曲<I'm Coming Home>では、全編デヴィッド・T.のエモなプレイが炸裂。

アートワークの通り、溌剌としたケリーのヴォーカルをご堪能あれ。