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ビー・ジーズ最後の生き残りであるバリー・ギブが、名だたる大物シンガーたちとのコラボレイトで創り上げた、超極上のセルフ・カヴァー・アルバムが届いた。こう言葉にしてしまうと、些か陳腐になってしまうと感じるほど、バリーや仲間たちの深い想いと鎮魂がこの一枚に宿っている。なるべくストリーミングなんかじゃなく、CDあるいはヴァイナルで、グラスを傾けながらジックリ浸ってほしい作品だ(国内盤ボーナスあり)。

初期ビー・ジーズが、フォーキーなサウンドに美しいハーモニーを乗せていたことは多くの音楽ファンがご存知と思うが、長兄バリーは幼少の頃からカントリーやブルーグラスが大好きだったと言う。その憧憬の心が、愛息が聴いていたクリス・ステイプルトン(15年にデビューしたカントリー・シンガー/17年にグラミー賞最優秀カントリー・アルバム受賞)に触発されて動き出し、バリー自身が憧れを感じていたアーティストや友人のシンガーたちに声掛けし、このアルバムが出来上がった。モーリス、ロビンと弟たちに先立たれ、音楽に向かうモチヴェーションもだだ下がりだったと思われるバリーが、俄然やる気を取り戻したのだ。

その根底には、兄弟3人で培ってきた音楽表現を守りつつ、時代に寄り添って広く伝えていく、そんな気持ちがあったのではないか。実際にジャケット回りを見ても、バリー・ギブの個人名ではなく、“Barry Gibb & Friends”という名義。日本盤はそれを消して、オビでバリー個人表記を採っているが、これはバリーのやっぱりバリーの本意ではないように思える。このアイディアをデイヴ・コブ(クリス・ステイプルトンのプロデューサー)に持ちかける際も、「礼儀正しく断られる」と思っていたという。そういう控えめのアティチュードが、この企画を可能にしたのだ。
「これを(モーリスやロビンと)一緒にやれていたらなぁ…。いや、一緒にやっていた、そう思う」とバリー。

気になる収録曲は以下の通りだ。

1. I've Gotta Get A Message To You(獄中の手紙) feat. キース・アーバン
2. Words Of A Fool feat. ジェイソン・イズベル 
3. Run To Me feat. ブランディ・カーライル
4. Too Much Heaven(失われた愛の世界) feat. アリソン・クラウス 
5. Lonely Days feat. リトル・ビッグ・タウン
6. Words feat. ドリー・パートン 
7. Jive Talkin' feat. ミランダ・ランバート&ジェイ・ブキャナン 
8. How Deep Is Your Love(愛はきらめきの中に)
      feat. リトル・ビッグ・タウン&トミー・エマニュエル 
9. How Can You Mend A Broken Heart(傷心の日々) feat. シェリル・クロウ
10. To Love Somebody feat. ジェイ・ブキャナン 
11. Rest Your Love On Me(愛は微笑の中に) feat. オリビア・ニュートン・ジョン
12. With The Sun In My Eyes(瞳に太陽を) 
13. Morning In My Life
14. Butterfly feat. ギリアン・ウェルチ&デヴィッド・ローリングス

カントリー系シンガーが多いため、日本では馴染みの薄い人もいる。けれどアルバム通して、往年のヒット曲をネタにゆったりしたトーンで共演を楽しむ、そんなベクトルで統一されている。だからバリーやヅエット・パートナーの思いの丈が、ジワジワとさざ波のように押し寄せる。コロナ禍や米国の相次ぐ騒乱に疲れてた世界が、心からの癒しを求めている今、そこにこれほどフィットする作品はない。実際、15日付の全英アルバム・チャートでは初登場1位を獲得。当然ながら、今年度のグラミーも視野に入ってくるだろう。バリーの機能に応えて現場を仕切ったデイヴ・コブは、こう語っている。
「バリーが目を閉じて別の星に行っちゃってるようなら、そのテイクは使える。見てると分かるんですが、バリーはその辺の感覚を本当に掴んでいるんです」

ふと思い出したのは、ライオネル・リッチーが12年に出した『TUSKEGEE』というアルバム。アレもまさに本作と同じような、カントリー人脈とデュエットしたセルフ・カヴァー集で、ジリ貧に喘いでいたライオネルを見事復活させるビッグ・ヒットを記録した。制作背景は当然異なるが、マーケット側の印象や受け入れ方には、かなり似通ったモノがある気がする。バリー自身がオーストラリア出身というのも、多様性や国際協調ムードに寄与するトコロか?

『SATURDAY NIGHT FEVER』のディスコ・ブレイクがあまりに大きかったため、ビリー・ジョエル同様、日本のAOR系ディレッタントからは敬遠されがちなビー・ジーズ。でもあのヒットがシーンに与えた影響は、シッカリ認識しておくべきだろう。ノラ・ジョーンズのデビュー盤を、スタイルに捕らわれない “心のAORアルバム” だと考えるカナザワには、このバリーの新作もまた、その同じ壇上にある。