joseph williams 021

昨日のスティーヴ・ルカサー新作『I FOUND THE SUN AGAIN」に続いてのポストは、当然その姉妹作となるジョセフ・ウィリアムス『DENIZEN TENANT』。ソロ作としては08年作『THIS FALL』以来13年ぶり。日本では、ピアノだけをバックにポップ・ヒットを歌ったイージーな企画作が複数出ているので、それを除くいた純然たるソロ・アルバムとしては、通算5作目になる。もっともそれもほとんどが日本制作(2枚目『I AM AIVE』は遅れて欧州盤が出た)。だからワールド・ワイドで出るのは、TOTO加入前の1st(82年)以来…、と思っていたら、今度は新作の日本発売がない。ここ10年、ピーター・フリーステットとの『WILLIAMS / FRIESTEDT』やチャンプリン・ウィリアムス・フリーステットの2枚があって枯渇感を味わうコトはなかったが、肝心のソロ作が日本で出ないのは本当に残念だ。

特に最近のジョーは、とても頑張っていたように思える。ボビー・キンボール在籍期のフェアウェル・ツアーにゲスト的に同行したあたりから、スティーヴ・ルカサーとの距離をドンドン縮めていった彼。でも直情的なルークの機嫌を損ねないように気を使う姿は、内心「そこまでしなくても…」と思っちゃうほど。でもそれで徐々に信頼を勝ち取り、諸事情で活動再開したTOTOのリード・ヴォーカルの座を射止め…。更に直近のスタジオ作2枚では、シッカリとルークの補佐役をこなしている。元々シンガーとしてはボビーよりも遥かに安定感があったから、今回の新生TOTOにも収まるべくして収まった感じ。デヴィッド・ペイチがメンバーから外れ、ポーカロ・ファミリーもいなくなった新生TOTOでは、ジョーの存在はある意味ステイタスと言えるのだ。

そんなジョーの『DENIZEN TENANT』に参加したのは、そのルーク、デヴィッド・ペイチを筆頭に、これまでTOTOのメンバー/ツアーに名を連ねたサイモン・フィリップス、ネイザン・イースト、リー・スクラー、レニー・カストロなど。更に嬉しいのは、デビュー作のプロデュースを手掛けていたジェイ・グルスカが、<Black Dahlia>と<No Lessons>でコラボレイト。更にマイケル・ランドゥ、ジョーの兄:マーク・T. ウィリアムス(ds)、ジェイ・グルスカの娘でミュージシャンとして活動しているバーバラもクレジットされている。

ルークの新作もカヴァー曲が聴き処のひとつになっていたが、それはジョーの作品も同じ。彼自身の楽曲/共作曲と並んで、2曲の有名曲が入っている。一方はビートルズ・フリークのジョーらしく、<If I Fell(恋におちたら)>。「ハーモニーが持つパワーとヴォーカル・アレンジメントを教えてくれた曲」だったそうだ。もう一曲のカヴァーは、意外にもピーター・ガブリエル<Don't Give Up>。オリジナルのケイト・ブッシュ役は、何とジョーの娘ハンナが登場する。どうしてもTOTO周辺のミュージシャンに目が行ってしまうが、ウィリアムス・ファミリーやグルスカ・ファミリーの参加が多く、そこにルーク、ランドゥ、レニー・カストロなど、ハイスクールの頃からの仲間たちの貢献が加わる。コロナ禍で制作した影響で、ジョー自身がほとんどのパートを担当した楽曲も少なくないが、そこにはやはりジョーのキャラクターが反映されているのは間違いなさそうだ。

響き的に馴染みが薄い『DENIZEN TENANT』というタイトルは、間借り人/借地人、というような意味らしく、ステイ・ホームの暮らしぶりをテーマにしているよう。陰影の深いリード・トラック<Never Saw You Coming>も、おおよそシングル向きとは言えない内省的な楽曲だ。それでもジョーにとっては思い入れが強いらしく、こんな風に語っている。
「すごく久しぶりに自分の本当のサウンドを表した曲だ。オレのアルバムは、幅広い音楽性の曲が集まったものだけど、この曲はアルバム全体を知るために必要なことを教えてくれるんだ。ヴォーカリストとしてのオレがどこに向かっているのかが分かるだろう。このアルバムは<Never Saw You Coming>から始まったんだ」

ジョーはご存知の通り、映画音楽のマエストロであるジョン・ウィリアムスの次男。でもソングライターとしては、繊細かつ若干クセのあるメロディーを書く傾向がある。でもこのアルバムでは、それが割と聴きやすくまとめられた印象。新生TOTOが何処へ向かうのかも含め、注目せずにはいられないニュー・アルバムだ。

『DENIZEN TENANT』とルークの『I FOUND THE SUN AGAIN』は、揃って2月26日の海外発売です。