footloose_soundtrack

ある教育関係企業が発行する出版物に単発の音楽コラムを寄稿するコトになり、70〜90年代洋楽シーン全体を俯瞰する作業を進めている。MTVが始まった80年代からPVが重要なプロモーション・ツールになり、サウンドトラックとの連動ヒットが急に増えるが、その代表格のひとつがコレ、84年の『FOOTLOOSE』。ちょうどSNSでもちょっとした話題になってたりして…。映画そのものはどうというコトのない青春映画だったけど、サントラ盤だけは米国ポップ史に残るヒット満載で。

ネットで話題になっていたのは、売れセンに走ったケニー・ロギンスのダメダメっぷりが、この『FOOTLOOSE』の主題歌の大ヒットから始まった、という見方。確かにヒット・チャート上はケニー初の全米No.1ヒットで、ここから『TOP GUN』の<Danger Zone>、『OVER THE TOP』の<Meet The Half Way>、『CADDYSHACK II』の<Nobody's Fool>と、怒涛のサントラ・ヒットが続いていく。でもそれを歓迎したのは、レコード会社と一般リスナーだけ。ロギンズ&メッシーナからの古いファンやAOR好きは、一斉に背を向けた。実際この頃出したアルバムも作為的な作りで、本来のケニーらしさは何処へやら。

でもケニーのキャリアを追ってみれば、<Footloose>のような健康的パーティ・ロックン・ロールは彼の十八番でもあり…。何よりケニー自身の書き下ろし楽曲で、この曲でケニーが突然変節したワケではなかった。もう1曲このサントラに提供した<I'm Free>は、ケニーとデヴィッド・フォスターのコラボ作品でもあり、『HIGH ADVENTURE』と『VOX HUMANA』を結ぶセンにあったと言える。おかしくなったのは、ジョルジオ・モロダーと組んでから、なんだな。そしてケニー自身も公私に渡って自分を見失い…。今は苦労の末にようやく自分を取り戻しているが、かつてのような成功は得られていない。

とはいえ『FOOTLOOSE』のサントラには、他にもAOR目線で気になる楽曲がいくつか。ケニー楽曲以上に愛聴していたのは、ハートのアン・ウィルソンとラヴァーボーイのマーク・レノがデュエットした<Almost Paradise...Love Theme From Footloose>。彼らの熱唱も然ることながら、作曲がエリック・カルメンだからね。更にカーラ・ボノフがトム・スノウ作の<Somebody's Eyes>を歌っている。大ヒットしたデニース・ウィリアムス<Let's Hear It For The Boy>も、トム・スノウ提供、ジョージ・デュークのプロデュース。もっともコレはポップに過ぎた感が強いけれど、その中にデニースのキュートな魅力と歌声の素晴らしさが濃縮されていて、デキが良かった。シャラマー<Dancing In The Sheets>は、当時カナザワが大いに注目していたビル・ウルファーの作曲/プロデュースだったが、コレは今イチだったかな。

改めて聴くと、懐かしい楽曲ばかりなのだけれど、サブスクに乗っている98年の15thアニヴァーサリー・エディイションには、ジョン・メレンキャンプの<Hurts So Good>、フォリナー<Waiting For A Girl Like You>が追加されていて、80年代感が一層増幅。でもそれをまったく古く臭く感じない、といのうは、つくづく自分も古〜い人間なのだな。