supremes 75

訃報。シュープリームスのオリジナル・メンバーであるメアリー・ウィルソンが、2月8日にネバダ州ラスヴェガス近くの自宅で息を引き取った。今年2021年は、ダイアナ・ロス、フローレンス・バラードとのシュープリームス結成〜モータウン入りから60周年に当たるそう(最初の名はプライメッツ)。秘宝の2日前には、自身のユーチューブ・チャンネルで「間もなく新しいソロ・アルバムをリリースする」と語っていたそうだから、文字通りの急死だったらしい。享年76歳。

シュープリームスというと、まずは何を差し置いてもダイアナ・ロス。だからメアリー・ウィルソンにスポットが当たるチャンスは、当時はあまりなかったようだ。グループは69年のダイアナ脱退後も継続、それなりにヒットを出したものの、世間的には大して注目されず、モータウンもメンバー自身も試行錯誤。ジミー・ウェッブと手を組んだ72年作『The Supremes Produced And Arranged By Jimmy Webb』は、90年代になってソフト・ロック方面でジンワリ再評価されたものの、当時のチャートにはカスリもしていない。それでも77年の解散までに11枚のアルバムを発表(うち2枚はフォー・トップスの共演作)しているのだから、モータウンも、彼女たちを何とかしたいと考え、ディスコ方面では一応の成功を手にした。

この機会に改めて、ダイアナ離脱後のシュープリームスを振り返ってみる。まずダイアナ脱退直後のジーン・テレルやリンダ・ローレンスが歌っていた頃は、ヒット曲こそあるものの話題性に乏しかったようで、半ば笛吹けど踊らず状態。煮詰まってきたところで、前述ジミー・ウェッブとのコラボ、73年の日本公演ライヴを挟んで、セールスはともかく音楽的には変化の兆しを見せ、75年の本作『THE SUPREMES』からシティ・ソウル路線に突入したと言える。メンバーも、唯一シュープリームスの看板を守っていたメアリー中心に、フローレンスの後任だったシンディ・バードングが復帰、そしてフレッダ・ペインの妹でグラス・ハウス出身のシュリー・ペインが新加入と、足並みが揃ってきた。

制作陣には、H-D-Hのブライアン・ホランドのプロデュースが2曲。そのうち1曲はジーン・ペイジ&ポール・ライザーがアレンジで、実に雄壮なモダン・ダンサーに仕上がっている。ハル・デヴィッド制作曲を書いているのは、サットンズのマイク・B.サットン。 反対にブライアン・ポッター&デニス・ランバート作<It's All Been Said Before>はマイケル・ロイドのプロデュースで、ダイアナ時代のようなオールディーズ・ポップスに回帰している。でもそれを演るなら、やはりダイアナの透明感に満ちたキュートな歌声が欲しいところ。本作でのリードはシェリーがメインで、メリーが3曲、両人の歌い分けが2曲。

でもココでのキモは、マッスル・ショールズの名コンビ:テリー・ウッドフォード&クレイトン・アイヴィーが4曲の制作を担当したことだ。後にロバート・バーンやマック・マクナリー、FCC、テルマ・ヒューストンなどを手掛けるこのチームは、実は70年代中盤のモータウンで多くの制作仕事を行なっていて、コモドアーズやテンプテーションズ、ジェリー・バトラー、シャリーンなどに絡んでいる。その中のひとつが、このダイアナ抜きのシュープリームスだった。2人が敷いた路線は、ガーリーなイメージだったシュープリームスが程よく成長したことをアピールする演出。きっと彼女たちが、これからはオトナのヴォーカル・チームとして歩いていくことを示したのだろう。宝石みたいなダイアナの個性がないから、当時のソウル系女性ヴォーカル・グループとしてはワン・オブ・ゼムに過ぎないかも知れない。実際にファースト・カット<He's My Man>はR&B69位、2ndカット<Where Is It I Belong>はR&B93位。でもそれがディスコ・チャートでは1位と3位。なるほど従来のイメージとは違った、ダイアナ不在の新しいシュープリームズ像が見えてくる。

とはいえこの後シンディが再度グループを離れ、元ワンダーラヴ(スティーヴィー・ワンダーのバック・バンド)、後にリオン・ウェア夫人となるスザイー・グリーンが加入。その編成で、解散までもう2作『HIGH ENERGY』『MARY, SCHERRIRE & SUSAYE』を作った。こちら2枚は未CD化のままながら、サブスクではどちらも聴くことができる。そこに、シティ・ソウル・スタイルの新しいシュープリームス あり。そしてそこにいたのは、このメリー・ウィルソンだったのだ。

Rest in Peace...