heart_brigade

産業/アリーナ・ロックの大物バンド、ハートの通算10作目のオリジナル・アルバム。発表は90年。既にデビュー時のラインアップは瓦解していて、アンとナンシーのウィルソン姉妹、ギターのハワード・リースのみ在籍。ベースはジョ・ジョ・ガンやスピリット、ファイアフォールを渡り歩いたマーク・アンデス、ドラムはモントローズ〜ガンマ〜カヴァーデイル・ペイジ〜ホワイトスネイクのデニー・カーマッシに代わっている。このメンバーになったのが、デヴィッド・ペイチやスティーヴ・ポーカロ、ジョナサン・ケインなどが参加した83年作『PASSIONWORKS』から。でも第2期黄金期と言える再ブレイクを果たしたのは、キャピトルへ移籍後の85年作『HEART』から。タイトルで分かるように心機一転、自作曲にこだわらず、外部ライターの楽曲を積極的に取り入れて、見事に復活を果たしたのだ。

ご紹介の『BRIGADE』は、そこから数えてのキャピトル3作目。『HEART』と前作『BAD ANIMALS』はロン・ネヴィソンのプロデュースだったが、ここではメキメキと制作手腕を発揮して台頭してきたリッチー・ズィトーにスイッチ。ジョー・コッカーやエディ・マネー、アニモーション、チープ・トリック、アリス・クーパー、そしてバッド・イングリッシュ…に続いての仕事で、まさに勢いに乗ったプロダクションだった。

ハートの方は、前2作は<Never>や<These Dreams>、<Alone>など、シングル曲のクオリティにアルバムが引っ張られる印象があったが、ここでは左にあらず。とにかく作曲陣がメガ豪華で、ヒット・メイカーのダイアン・ウォーレン、<Alone>を書いた I-Ten のビリー・スタインバーグ&トム・ケリーを筆頭に、ブルース・ロバーツ、アルバート・ハモンド、女流作詞家フラニー・ゴールド、パット・ベネターらにヒットを提供してソロ作も出しているホリー・ナイト、もちろんメンバー自身も何曲かペンを取っている。ちょっと珍しいところでは、カーマッシのマントローズ時代のご縁か、サミー・ヘイガーが曲作りに参加。ゼロ年代に再評価されたシンガー・ソングライター:ジェフ・ハリントンも1曲書いている。まさにアダルト・コンテンポラリー好きが泣いて喜びそうな並びなのだ。

実際 楽曲は粒揃いで、パワー・バラード<All I Wanna Do Is Make Love To You>は全米2位を記録。ハート・ファンの間でも、彼らの最高傑作に本作を挙げる人が少なくない。確かにヒット曲個々のインパクトは前2作の方が強かったが、アルバム・トータルの完成度や安定感は、間違いなくコチラだと思う。

ただし、やっぱり歌っているのは女性シャウターのアン・ウィルソンで、アレンジは大風呂敷な産業ロック。時にアコースティック表現にも味を見せるハートながら、基本的に機微に富んだ繊細な表現はない。だから胸がキュンとなるような哀愁味には乏しく、FM電波ノリの良さそうな楽曲がズラリ並ぶ。

ディスクガイド『AOR Light Mellow Premium 02』制作中の折、こうしたAOR寄りの産業ロックをどこまで扱うかはひとつの懸案なのだけど、ハートはやっぱりチョイと大味(それは別の意味で好きだけど…)。例えば、シカゴ『19』『21』と比べた時に、楽曲そのものやアルバム単体のカラーは近くても、やはり辿ってきた道のりや目指すステージが違うことが、そのまま音に表れちゃうんだよなぁ…