yellowjackets_samurai samba

今回もAORディスクガイド制作中お悩み日記(?)、そのクロスオーヴァー〜フュージョン編。産業ロックやソウル/R&Bと違ってインストゥルメンタルが中心なので、基準はより明快だが、それでもひと筋縄ではいかない。楽曲単位ではなく、アルバムをレビューのベースにしているからだ。

ではアルバムに、AORと言える歌モノが2〜3曲入っていればイイのか? イヤ、そうではない。オリジナルの99年初版『AOR Light Mellow』でも、ジョージ・ベンソン『BREEZIN'』を取り上げていたのが分かりやすいが、単純に歌モノの数ではないのだ。ベンソン<This Masquarede>のように、洋楽シーン全体をアッと言わせるほどの重要曲で、ベンソンのキャリア・ソングにもなっている。だからアルバム『BREEZIN'』の顔になっているのは疑いない。他の曲がオール・インストでも、アルバム・イメージを決定づけている代表曲だから、それを以ってアルバム自体をAOR作として扱うことには躊躇はない。同様に、名曲<Juts The Two Of Us>が入っているグローヴァー・ワシントンJr『WINELIGHT』、フュージョン史に於いてヴォーカル・ソングの重要性を知らしめたクルセイダーズ<Street Life>(同名アルバム所収)も、今回はベンソンと同程度の扱いにしようと思っている(クルセイダーズは歌モノ・ベストという変則技もある…)。

でも問題はその先だ。サビだけコーラスが入ってくるナンバーやスキャットだけの楽曲は、AORのヴォーカル・チューンには数えないつもりだが、上記ほど強いインパクトを持たない楽曲の場合は? それこそ収録曲に占めるヴォーカル・チューンの比率、その曲自体のAOR的な魅力、他のインスト曲とAORチューンの馴染み具合、アルバム全体がAORファンの耳にどう聴こえるか、そのあたりを総合的に勘案したい。ジョー・ザヴィヌルのザヴィヌル・シンジケートでリチャード・ペイジが歌っていても、それってどうなの?、というコトだ。

そこでこのイエロージャケッツ3作目、85年の『SAMURAI SAMBA』。ギター抜きのカルテット体制がココが確立し、サックスにマーク・ルッソが参加している。音楽的には、元々の爽快L.A.フュージョン志向から変幻自在のコンテンポラリー・ジャズ・スタイルへの進化が始まった転機のアルバム。そうした意味では、AOR寄りのヴォーカル・チューンなど、バンドのステップ・アップには不要だった気がする。それでも、ビジネス的方策に立っていると思しき共同プロデューサー:トミー・リピューマからの要請で、歌モノを入れる必要に迫られたのではないか。

でもそこはサスガに才人ラッセル・フェランテ、歌モノにトライする以上は徹底して…。ゲスト/作詞にボビー・コールドウェルを迎え、かなりハイ・レヴェルなAORチューン<Lonely Weekend>を完成させた。後半転調を繰り返すあたり、なかなか凝った作りである。

でもそれ1曲だけなんだな。AOR的には。強いて言えば、<Daddy's Gonna Miss You>は、本作にコーラス参加しているマリリン・スコットが新たに歌詞を書き、彼女の3枚目のソロ・アルバム『SKY DANCING』(91年)に<Show Me Your Devotion>のタイトルで収めている。しかもそこでデュエットしたのもボビー・コールドウェル。とはいえ本作では、サックスがメロを取るアーバン・メロウなインスト・ナンバーに過ぎない。

だから、フュージョンとして聴けばなかなか魅力的なアルバムも、視点を変えて AOR目線で聴くと、どうしたって物足りなく映ってしまう。<Lonely Weekend>1曲で満足できるのは、おそらくボビーの盲目的ファンだけではないかな? 知名度や波及力では、<This Masquarade>や<Juts The Two Of Us>、<Street Life>に及ばないのは言うまでもなく、AORフリークやフュージョン・ファンの間での人気に止まる。

ただその一方で、そのままスルーしてしまうのも忍びない。ここはひとつ、単体レビューに至らなかったアルバムからリコメン曲だけ引き抜いて、コラムにまとめめてアピールするのが一番かなぁ〜?