bill chaplin_livin4love

13年ぶりとなるビル・チャンプリンのニュー・アルバム『LIVIN' FOR LOVE』、ようやく情報解禁になりました。SNSなどで見かける美しくもリリジャスっぽいアートワークは、ビル自身をフィーチャーした日本限定ジャケットに変更。オリジナル収録に加え、日本盤はボーナス・トラックが2曲追加される。解説はシカゴならこの方!の伊藤英世さんとカナザワのダブル・ライナー。解説用の取材も行なった。リリースは少し先の4月28日になる。

昨年、CWFことチャンプリン・ウィリアムス・フリーテッド2作目の解説用取材の中で、「いまソロ・アルバムを作っている」と明かしたビル。最初はワンダーグランドの2作目に入れるつもりで書いていたマテリアルが、どうも自分のソロ・アルバム的だと気づき、周囲、特に奥様タマラの強い勧めで、本格的にソロ制作に動いた。新型コロナ・ウィルスの影響で巣篭もり状態の中、時間だけはタップリあった。

自宅スタジオでコツコツ作っただけに、今作はビルがひとりでベーシックをレコーディングした楽曲が多い。それを元にして、親しいミュージシャンにドラムやパーカッション、ホーン、ギター・ソロやシンセ、バック・ヴォーカルなどを重ねてもらう。レニー・カストロ(perc)、スティーヴ・ポーカロ(syn)、マーク・ルッソ(sax)、カーメン・グリロ(g)、タル・モリス(g)、そしてワンダーグラウンドのゲイリー・ファルコーニ(g,back vo)らが、そのパターンでの参加者。マーク、カーメン、タルはいずれも、90年代から活動を再開させたサンズ・オブ・チャンプリンに参加していた時期がある。

他方で、ビルが「いい曲はないか?」と声を掛けた相手が、ブルース・ガイチとグレッグ・マティソンだ。ソロ前作に当たる『NO PLACE LEFT TO FALL』での重要パートナーだったブルースは、オープニング<Reason To Believe>を提供。音源が送られてきた時点では、ブルースとジョージ・ホーキンス(b)、ヴィニー・カリウタ(ds)に拠るトラックだけで、メロディや歌詞はなかったそうだ。でも最初から"WOW!" と叫んでしまうようなデキで、スンナリとオープニングに収まった。ビルにとっては、18年に亡くなってしまったジョージ・ホーキンスのプレイが入れられたコトが嬉しく、このようなバンド・サウンドこそが自分の好みなのだと強調している。

グレッグは<Especially Me>と<Losin' Ground>、<The Truth Has Begun>の3曲をビルと共作/共同プロデュース。彼らの付き合いは古く、グレッグは92年作『BURN DOWN THE NIGHT』や95年のライヴ盤『MAYDAY』でも重要や役回りを担っている。<Losin' Ground>のベースがエイブ・ラボリエルというのも、AORファンにはポイントが高そう。

そしてアルバムのハイライトとも言えそうなのが、ジェイソン・シェフとのデュオ曲<Show Me>だ。この曲は、ビルがソロ・アルバムを作ることを決める前にレコーディングしてあった楽曲で、2人で顔を突き合わせてレコーディングしたそう。ソロ制作を決めてから改めてジェイソンに連絡し、「少し新しく、ハードにしてソロ・アルバムに入れていいか?」と訊いて承諾を取った。ビル曰く、「アイツはシカゴ時代よりも良くなっている」そうで、特にベースと作詞の成長に驚いたとか。聞けば一緒に新しいプロジェクトにも取り組んでいるそうで、その辺りはCD解説をお楽しみに。

ビル・ファンならご存知かと思うが、彼はこの12年の間、シカゴからの脱退の他に、息子の死や自身のガンとの闘病を乗り越えてきた。それだけに今作は私的なストーリーを語っている曲もあって、いつになくヘヴィーな歌詞のナンバーや、スティーヴィー・ワンダーにインスパイアされた楽曲などが入っている。「ひとりで書くと気を使わず、自分の思った通り、感じた通りを曲にできる。それがクールなところ」とか。

ワンダーグラウンドに書いていて、今回ボーナス曲に転じた<Lave To The Medicine><A Force We Can't Fight>は、どちらもボーナス・トラックとは思えぬクオリティ。特に前者で聴けるゲイリー・ファルコーニのピッチシフターを使ったと思しきギター・ソロは、とてもビルのアルバムとは思えぬインパクトで迫ってくる。全体的に『NO PLACE LEFT TO FALL』や95年作『HE STARTED TO SING』に通じるような、R&Bスタイルの骨太ロック・スタイルのアルバムで、シカゴ時代のようなパワー・バラードやコンテンポラリーなAOR作品ではない。でもそれこそが、ビル自身が自然体で作る音楽である。

なお4月28日には、既に入手困難となっているCWFの1stも、新装ジャケット、現行ボーナス・トラック2曲に更に3曲追加した全15曲入りで再発売。その新規追加曲には、ビルが歌った<Aria>のアウトテイク、昨年11月にビルのソロ名義でリリースされたクリスマス・ソング<Best Day Of The Year>が含まれることになっている。聖歌は本来、ソロ作である『LIVIN' FOR LOVE』に収められるべきだが、前述2曲を入れただけでタイム・オーヴァー。ならばコチラにと、粋な計いに相成った。マニアならコチラも買い直し必至だな