robin thicke

唐突に登場したロビン・シック、6年半ぶりのニュー・アルバム。デビュー以来のインタスコープとは既に契約が切れ、自主レーベル:Lucky Music を立て上げて Empire の流通に乗せたカタチでのリリースになった。シックといえば、8年前の<Blurred Lines>が世界のヒット・チャートを席巻したと思ったら、すぐにマーヴィン・ゲイ遺族から盗作との訴訟を起こされ敗訴。オマージュとパクリの違いについて、大きな物議を醸したことが記憶に新しい。しかもその前後から、離婚問題、父アラン(俳優/AORファンにはデヴィッド・フォスター&ジェイ・グレイドン制作のシングルやビル・チャンプリン『RUNAWAY』への参加で知られる)やマネージャーの相次ぐ逝去、山火事による自宅焼失と災難続きで、表舞台から姿を消していた感があった。世界的コロナ・パンデミック発生後も、メンターであるアンドレ・ハレル(アップタウン・レーベル創始者/一時モータウン社長)を亡くしている。

でも実際は、18年から復活へ向けて着々とシングルをリリース。19~20年にかけて4曲をデジタル・リリースし、そのうちの2曲、<That's What Love Can Do>と<Forever Mine>をアルバムにも収めている。前者はファルセット使いの甘茶バラードで、エレキ・シタールとミュート・トランペット・ソロがエラく気分。後者はハレルに捧げたジャズ・バラードで、ここではミュート・トランペットとサックスが気分を煽る。この2曲でアルバムの最後を締めるあたり、このアルバムに向けた彼の思いが伝わるよう。アルバム・タイトル『ON EARTH & IN HEAVEN』も、それを象徴している。

アコースティック・ギターが醸すフォーキー・ソウル・テイストをネイキッドなビートに絡ませる手管は、これまでのシックの常套手段。なのに<Blurred Lines>騒動以降の悲運を知っていると、そのオーガニックな響きが余計に琴線に触れてくるようで、千々にココロ乱される。<Lola Mia>や<Look Easy>など随所に現れるラテン〜スパニッシュ・フレイヴァーも今に始まったコトではないハズのに…。ボッサな好曲<Out Of Mind>では、思わずプリンスのデビュー盤を思い出したりも。

更にニヤリとさせられるのが、2曲目<Hola>だ。マーヴィン遺族から訴えられて傷を負ったばかりなのに、ベース・ラインは丸きりスティーヴィー・ワンダー。多重コーラスもやはりマーヴィンを髣髴させるもので、コレはもう確信犯というか、判決への挑発行為にも映る。一方でココでもフリューゲルホーンのソロを交えるところは、ロビンの真骨頂と言うべきか。再びファレル・ウィリアムスと組んだ軽快ダンサー<Take Me Higher>が一番の話題ながら、コレも何処か空耳的で、クール&ザ・ギャングとスティーヴィーの掛け合わせみたい。

「オレはホワイトだけど、こうしたソウル/R&Bの名曲はもう血肉化していて、自然に湧き出てくるものなんだ」
そんな主張が静かに込められているような、会心の復活作。欲を言えば、折り込みジャケットに載っている情報量満載のクレジットは、もっと大きな文字にして欲しかった。ぶっちゃけ、ルーペが必要ですぅ〜