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今日は神田小川町のシンコー・ミュージックで、福田直木クンと『AOR LIght Mellow Premium 02』用の対談。"02"ではレジェンド以外のAOR 黄金期作品を取り上げるので、AORをよく知らない人や後継世代にAORをどう提示していくか、という話になった。その中で、昨今のSNSのAORファン・グループの暴走ぶりが目に余る、と意見が一致。別にAORに限らずだけど、そういう所で積極的に発言したがる方々は、ネタをいっぱい持っている顕示欲強めの中堅マニアが多く、ニッチなアイテムや意表を突くアーティストを次々アップしてくる。でもコレ、マニア同士の与太話なら大いに結構だけれど、SNSでは多くの初心者や初級レヴェルの人が黙って見ている。となると、要らぬ誤解を招く可能性大。引いては「AORって難しい」と興味の芽を摘むコトになりかねない。基本知識があるのだからココは想像力を叩かせ、王道と脇道をバランス良く、節度を以てレクチャーしてほしいもの。エルダーAOR世代の慰みモノで終わらせてはイケないと思うのだ。

ところでこのところ、ベテラン勢のボックスが乱発気味。我が家にもジョン・レノンやブラック・サバスのハコ物が届いているし、フリートウッド・マック関連も到着待ち。更にクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング『DEJA VU』50周年盤も控えていて、財布にまったく余裕がない。でも出れば買わずにいられないのが悲しい性。このアル・スチュワートの代表作『YEAR OF THE CAT 〜45th Anniversary Deluxe Edition』も、通常盤とどちらするか悩みつつ、どうせ買い直すなら…と、拡大版をチョイスした。

この『YEAR OF THE CAT』は、英国人シンガー・ソングライターのアル・スチュワートが76年初頭に、アビー・ロード・スタジオで録音した通算7枚目のアルバム。プロデュース&エンジニアをアラン・パーソンズが担当し、タイトル曲が全米8位と大ヒット。 アルのUSに於ける出世作になった。彼は基本的にフォーク・ロックが持ち味だけれど、この時期は時代の波とアラン・パーソンズの手腕によって次第に都市型スタイルを強めており、このアルバム以降は薄味のAORとして聴くことができる。

デラックス・エディションの内容は、3CD+DVDの4枚組。CDは、アラン・パーソンズがオリジナル・マスターから新規リマスタリングを施し、前年にレコーディングされた<Belsize Blues>のニュー・ミックスを追加収録。これに、76年10月のシアトル/パラマウント・シアター公演を2枚のディスクに完全収録している。DVDには、オリジナル・マルチトラック・マスターからの5.1サラウンド・ミックスを収録。もちろんコレもアラン・パーソンズがミックスを担当している。加えて70P近い豪華ブックレット+ポストカード4枚+レプリカ・ポスターも。去年リイシューされた『24 CARROTS』40周年盤は、デジパック仕様のCD3枚組だったが、今回は4枚組なので、10インチ・サイズのれっきとしたボックス物。ちなみに通常盤は、オリジナル・アルバムの新規リマスターと、上掲シアトル公演のライヴからの縮小版による2枚組だ。

ただ、ヒット作/出世作とはいえ、AORの耳で聴くと、同じパーソンズ制作の次作『TIME PASSAGE』に軍配を上げてしまう。ボズ・スキャッグス『SILK DEGREES』と同年の英国作品となれば、うすしお味に止まるのは致し方ないだろう。それでもアルお抱えのピーター・ホワイト(g)、パーゾンズ人脈のティム・レンウィック(G)やスチュアート・エリオット(ds)、そしてアンブロージア時代のデヴィッド・パック(cho)と、気になる顔ぶれも(初期アンブロージアはパーソンズ制作)。ライヴの方では、ピーター・ホワイトは当然のこと、ピーター・ロビンソン(kyd/元クォーターマス/エアプレイの録音にも参加)、後にリンダ・ロンシュタットで名を上げるマーク・ゴールデンバーグも参加していてビックリした。

英国産AORの奥床しさがお好きな方に。