omega tribe

カナザワがサポートしている今井優子とジャンク フジヤマのジョイント・ライヴ『Light Melllowな夜』(4月29日)も、1月からの延期→時間変更→無観客・配信→会場変更と、コロナ対策に思い切り振り回されてしまったたが、こちらの振り回され方はもっとハンパない。杉山清貴&オメガトライブ『The open air live “High & High” 2021』。元々は昨年4〜5月に開催予定だった即完ライヴが、あろうことか1年延期。リスケされた4公演は、今また 再び発布された東京・大阪の緊急事態宣言に引っ掛かってしまい、開催できたのは5月5日の神奈川県民ホール公演のみ。3日の大阪公演@大阪城野外音楽堂、10日の東京公演@立川ステージガーデンは中止になり、WOWOW生放送と有料配信が予定されていた9日@立川ステージガーデン公演は無観客開催となった。今回チョッとしたご縁があり、関係者としてその無観客ライヴを観せていただく機会に恵まれた。

ほぼ同世代のバンドなので、各方面から「オメガトライブ、聴いてたでしょ?」と言われる。イヤ、それこそ前身の “きゅうてぃぱんちょす” のテープを、高校時代のバンドの先輩から聴かされてたくらいだ。ところが、デビューから人気沸騰への経緯に釈然としないモノがあって、アルバムが出ればチェックする、その程度の距離感で遠目に眺めていた。釈然としなかったのは、自分の大学時代のサークル仲間で、一時は一緒にバンドを組んでいたことがある角松敏生との因縁から。某事務所からデビューした角松が急速にブラック・ミュージックに傾倒し、夏男イメージからの脱却やライヴ・パフォーマンスへの希求から事務所を移籍。そして角松の抜けたトコロに彼ら:杉山清貴&オメガトライブがすっぽりハマり、デビューして大ヒット。しかも主要曲は売れっ子作曲家:林哲司が作編曲していて…。

正直、何だかなぁ…、と思った。確かに耳に入ってくるオメトラ楽曲は、どれも聴きやすくてメロディがキャッチー。こりゃあ〜売れるわ、と。でも筒美京平が確立した洋楽からの「引用の美学」が全開なことにも気づいていて、その制作サイドの裏側が垣間見えた。現在はアーティスト本『杉山清貴&オメガトライブ 35年目の真実』でいろいろと詳らかにされているが、当時から“レコードでは演奏してない” という噂は大きかった。歌謡番組にもバンバン出ていて、そうした芸能界寄りの活動スタンス、女子大生狙いのイメージ戦略も疎ましく映った。だから、彼らに対する見方が最初に変わったのは、人気絶頂のタイミングでアッサリ解散を決めた時。一番最初は、看板:杉山のソロ志向が強くなったのだろうとタカを括っていたが、実は事務所の言いなりになっていたコトに嫌気が差したと知り、ちょっとシンパシーを感じるようになった。

その後、ハワイで悠々自適に暮らしながらソロ活動を展開した杉山を、ちゃんとフォローしていたワケではない。ただ、それなりの年齢になっても若い頃の声をハイレヴェルで維持していることに感心していたし、(南)佳孝さんとのデュオ盤はそれなりに楽しんできた。ソロ最新作『RAINBOW PLANET』には、自分がCDデビューへの道筋を敷いたブルー・ペパース/福田直木クンが楽曲提供。実はその新作が出た時には、某所からインタビュー取材の依頼もあった。けれどその時は取材日指定があって、スケジュールが合わなかった。ムム、残念…

そんなこんなで、オメガに関してはずーっと外野にいた自分なのに、熱烈ファンが排除された無観客ライヴに潜入できる後ろめたさを感じつつ、その一方で、こんなタイミングで誘われたということは、どういうことか?と考えた。それはつまり、何事も否定しない盲目的ファンとは異なる冷静な第三者的目線で、シティポップ・ブームの中で開催されたこのライヴの意義を伝えよ、というコトかと。

今回の立川ステージガーデンは、コロナ禍の昨年4月にオープンした新しいホールで、シート数は着席で2300超、1階をスタンディングにして3000人収容の大型ホール。それが今回は、身内や関係者だけのわずか20〜30人(スタッフ除く)。出演メンバーのうち杉山さんだけは配信ライヴを経験されてるようだが、こんな大ホールがスッカラカン、曲が終わってもシーンというのは、相当にやりにくかっただろう。

メンバーは従来の7人から1人欠席(ギターの高島信二が体調不良で)の6人。これにファイアー・ホーンズ3人と全盛期からの影武者コーラス:比山貴咏史&木戸泰弘がステージに立った。サウンドが気になってしまうカナザワとしては、そのサポート陣の活躍が楽しみのひとつ。セットリストは下に貼ってあるように、定番ヒット+杉山清貴&オメガトライブとしてのラスト・アルバム『FIRST FINALE』からのセレクトが中心である。『FIRST FINALE』はフェアウェル・ツアーで全国を回りながらレコーディングしたため、収録曲がステージに掛けられたコトがなかったそうだ。だから今回はそこからタップリ、という趣向。モニターの向こうにいた年季入りファンは、きっと感涙のセットだったに違いない。

カナザワが改めて思ったのは、やっぱり杉山のヴォーカルは天下一品、ということ。熱唱スタイルではないので伝わりにくいが、あのキーの高さでもピッチが全然乱れない。しかも2時間、見かけはサラリと爽快なままだから恐れ入る。そしてオメガの方も、昔のイメージのまま、ソツなくまとまっている印象。和モノというと、やたらと凄腕ミュージシャンのライヴばかりに足を運んでいる自分なので、この手のバンドにはあまり期待はしないのだが、彼らは小振りながらもバンドの一体感がスゴかった。全盛期のノリは学生バンドのままだったそうだから、気持ちは今もその当時と変わってないのだろう。一流ミュージシャンだと、譜面なんてあくまでテキスト。それを元に、スコアに書かれてないことを如何にカッコ盛り込むかに情熱を傾けたりする。でも彼らの場合は、余計なコトは一切せず、予め決められたアレンジをシッカリこなすことに全霊を傾ける。短いギター・ソロやサックス・ソロはあっても、ソリストがフリーになって弾き倒す場面はなどない。あくまで曲を聴かせるパフォーマンスで、ほぼレコード通りの歌と演奏を次々に繰り出していく、そういうスタイルのショウだ。レパートリーも明る曲ばかりだし、そういう意味では、ケレン味なくコンパクトにまとまった、観ていて小気味の良いステージだった。

ただ今回は、無観客配信ライヴということもあってか、やたらとMCが多かった気も。2〜3曲歌ってはMC、また2〜3曲歌ってMCの繰り返しで、どうにも乗り切れないコマ切れ感があった。でもMCの内容は、ファンには興味深い話ばかりだろう。欠席メンバーとスマホで話す演出も気が利いてた。この辺りは、ちゃんとしたオーディエンス相手の通常ライヴでは違っているかも。

以前から知己のあるコーラス隊お二人は、もうさすがのハーモニー。オメガの楽曲って、実はリード・ヴォーカルに寄り添うようなコーラスがかなり重要なパートを占めている。でも、当時から舞台袖やカメラに映らないところでハモっていた影武者たちだから、これはまさにノー問題。やはり顔見知りのファイアー・ホーンズは、サックスのジュニアがパーカッションまで担当する出ずっぱりの大活躍で、完全に準メンバー的存在感を発揮していた。

今回は極めて不運な巡り合わせだったけれど、MCでも言っていたように、オメトラはコレで終わり、ではないはず。近いうちにフル・ラインアップで、今度は満杯のお客さんを前にして、思いっきりプレイしてほしい。モニターの向こうにいるのは、ほぼエルダー層のファンだと思うが、同じようなプロダクツで制作された菊池桃子の再評価や、同じ林哲司ワークスである松原みき<真夜中のドア>人気をを見るにつけ、それなら杉山清貴&オメガトライブだって俎上に乗るべき、と思う。海外から火がついた面のある現行シティ・ポップ・ブームだから、多分に歪んでいるトコロがあるのは仕方ない。でももし彼らがスルーされたり、こうしたリユニオンがただの懐古趣味で終わってしまうなら、今度は別の観点で、何だかなぁ…、と思ってしまうよ。

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