robert palmer_pressure drop

断続的ではあるけれど、三たび、ユニバーサルの廉価シリーズ【ロック黄金時代の隠れた名盤 〈1965-1975編〉】から、ロバート・パーマーの『PRESSURE DROP』。75年に発表された、彼のソロ2作目。パーマーの人気が爆発したのは、デュラン・デュランやシック勢とチーム・アップしたパワー・ステイションがキッカケ。<Every Kinda People>など、以前からそれなりのヒットはあったが、パワ・ステの流れで制作した9枚目のアルバム『RIPTIDE』(85年)で、ようやく本格的に成功。一般的にはそれでパーマーを知った、というファンが多いと思う。でもウルサ方には、それ以前のパーマーこそ最高、という声が根強い。確かに『RIPTIDE』は良いけれど、常に時代を先読みしてアルバムを作ってきたヒトにしては、一気に日和っちゃったな、という印象があった。

とにかく、まだ米本国でも認知度が低い頃からリトル・フィートを重用。このアルバムではバンドごと召抱え、彼らをモータウンのリズム体であるジェイムス・ジェマーソン&エド・グリーンと組ませた粋人である。しかもストリングスはジーン・ペイジ。ホーンはマッスル・ショールズ・ホーン・セクション+メル・コリンズ。

楽曲的にも自身のオリジナルを中心にしつつ、タイトル曲はレゲエ・レジェンド:トゥーツ・&ザ・メイタルズのカヴァー、<Trouble>はフィートのレパートリーを取り上げ、<Riverboat>はアラン・トゥーサン作。こうした並びだけでも、パーマーの本物志向が分かる。

その後のアルバムでもゲイリー・ニューマンだの、ザ・システムだのを真っ先に起用。ディスコ・ミックスでお馴染みのトム・モールトンの才を認め、意識的にプロデューサーに起用したのも、ロック系ではパーマーが一番早かったのではないか。

70年代は、ポール・ロジャースの後継に立ち得る英国ブルー・アイド・ソウル・シンガーとして、ジェス・ローデン、フランキー・ミラーと共に注目されたパーマー。でも彼はヴォーカル・スキルが云々というより、音楽性そのものがスタイリッシュだった。彼自身はヒットが出ても浮かれるタイプではなかったが、それでも人気や評価とは裏腹に失ってしまうモノってあるんだな。