toto_live friends

気がつけば、もう6月。コロナ禍による緊急事態宣言/蔓延防止重点措置の中、国は何がナンでも五輪開催、に突き進んでいる。スポーツ・イベントとしてのオリンピックは有意義だと思うが、今の在り方は政府や都、IOC、スポンサー企業の金集めとプロパガンダが目的だから、国民を危険に晒してまで開催する大義などない。でももうここまで来たら止まらない、というのも現実だろう。失敗は望まないけど、そのままの流れで強行するなら、政府とIOC首脳が引っくり返って総退陣せざるを得ないくらいの禍根、しっぺ返しはあって然るべき、と思う。

さて月が変わったので、今月25日に発売されるコレ、TOTOの『WITH A LITTLE HELP MY FRIENDS』をご紹介。これは、19年10月のフィラデルフィア公演を最後に2度目の活動停止を表明していたTOTOが、新ラインナップで蘇生。昨年11月21日に 開催した一夜限りのオンライン・ライヴをパッケージ化したものだ。リリース形態は、CD+BluRay、CD+DVD、CDのみの3タイプ。併せて、国内リリースが見送られていたスティーヴ・ルカサーのソロ『I FOUND THE SUN AGAIN』、ジョセフ・ウィリアムスのソロ『DENIZEN TENANT』も同時発売となった。もうこれは、ちょっとしたTOTO祭りの様相を呈しつつある。

「解散解散と言ってても、結局また演るんじゃないか。解散詐欺」なんて声もチラホラ聞こえるが、感情の起伏が激しいルークは、裏を返せば正直な人。モチヴェーションが上がっているのか、下がっているのか、はたまたそれが何処へ向かっているのか、すぐに分かる。ルークにとっての原動力、というか精神的な支えは、ハイスクール時代から一緒にプレイしてきたデヴィッド・ペイチであり、ポーカロ兄弟なのだ。だからそれを失ったり、図らずも距離ができてしてしまった時に、TOTOは解散の危機に見舞われてきた。2年前もペイチがドクター・ストップ、ジェフ&マイク・ポーカロの遺族からはバンド名の使用を巡って訴訟を起こされ…。ツアーは表向き順調だったが、舞台裏では諍いが絶えず、プレイング・マネージャーだったルークは疲れ果ててしまったらしい。

そうした流れで、それぞれソロ・アルバムに向かったルークとジョー(=ジョセフ)。最初は、アルバムができたら一緒にツアーするか、ぐらいの軽いノリだったらしいが、互いのアルバムに参加し合い、一緒にリンゴ・スターに曲を書き…、なんてしている間に話が膨らみ、ルークが自分の契約しているレーベルをジョーに紹介したのを機に、2枚のソロ・アルバムを姉妹作として同時発売するコトに。ちょっとヤバ目のアートワークは、やはり彼ら流のジョークでマグショット(逮捕後に警察で撮影する写真)を模したもの。当然、前述裁判で敗訴したのをパロッたのだろう。それぞれのソロ・アルバムについては以下をご参照あれ(I FOUND THE SUN AGAIN / STEVE LUKATHER // DENIZEN TENANT / JOSEPH WILLIAMS

で、更に話が進み、ルークとジョーが一緒に演るならTOTOと名乗ればイイぢゃん!と。かくしてペイチのお墨付きを得た2人が集めたのは、2年前の最終ラインアップからウォーレン・ハム (sax, flute, cho) とドミニク “ゼヴィア" タプリン (Key)、彼らとは幼馴染みであるジョン・ピアース (b)、そしてロバート “スパット"シーライト (ds) とルークの息子トレヴァーに紹介されたスティーヴ・マッジオラ (key)。これにデペイチがゲスト/音楽監督として参加している。

オンライン・ライヴが決まって10日間で組んだそうだが、そこは世代が変わっても百戦錬磨の強者ミュージシャンの集合体。ゼヴィアは元々プリンスのサポートをしていたし、スパットは今をトキめくスナーキー・パピーのドラマー。ドクター・ドレのツアーのミュージカル・ディレクターでもあったそうだ。

重要なのは、そういった世代もスタイルも違うミュージシャンたちがジョンイトできる適応力が、バンド、若手の双方に備わっていること。演奏スキルの高さは言うまでもないけれど、きっとその感覚は、<Africa>が少し前にリヴァイヴァルしたコトとストレートに繋がっている。ジョーが “TOTO=デヴィッド・ペイチ” と断言し、自分にとってのTOTOは、レジェンダリーなラインアップ(オリジナル6人+マイク・ポーカロ、ファーギー・フレデリクセン、そしてジョー自身まで)でなければならない、と言うのも、それと同じなのだ。

収録曲は以下参照だけれど、ここに<White Sister>や<You Are the Flower>が入るのは、ボビー・キンボールとオリジナルTOTOを深くリスペクトするジョーなればこそ。個人的には、最初のフェアウェル・ツアーではゲスト的に復帰しただけだったジョーが、甲斐甲斐しく働いて徐々にルークからの信頼を勝ち取り、完全に右腕となって活躍しているのが嬉しい。またアルバム・タイトル通り、リンゴの存在も彼らにとっては大きくて、2人の音楽活動のターボ・チャージャーみたいな存在になっているようだ。

既にAOR専門誌などで彼らのインタビューは掲載済み。カナザワもライナーこそ書いていないが、メーカーからオフィシャル取材を依頼され、アチコチの音専誌に書いたり語ったりすることになっている。広い世代の目に触れる媒体なので、ある意味、ファンの顔が見える専門誌よりも責任重大。何に載るかは、タイミングを見ながら facebookで発信します。


[収録曲]
01. Till the End from 『ファーレンハイト』(1986)
02. Hold the Line from 『TOTO 宇宙の騎士』 (1978)
03. Pamela from 『ザ・セヴンス・ワン ~第7の剣~』(1988)
04. Kingdom of Desire from 『キングダム・オブ・デザイア ~欲望の王国~』(1992)
05. White Sister from 『ハイドラ』(1979)
06. You Are the Flower from 『TOTO 宇宙の騎士』 (1978)
07. I Wonʻt Hold You Back from 『TOTO IV ~聖なる剣~』 (1982)
08. Stop Loving You from 『ザ・セヴンス・ワン ~第7の剣~』(1988)
09. Band Introductions
10. Home of the Brave from 『ザ・セヴンス・ワン ~第7の剣~』(1988)
11. Rosanna (with David Paich) from 『TOTO IV 聖なる剣』 (1982)
12. With a Little Help From My Friends? (The Beatles cover) (with David Paich)