hamish stuart

Record Store Day 2021とは関係ないが、 この4月に初めてアナログ・リイシューされていたこの皿を勢いに乗って。元アヴェレイジ・ホワイト・バンド(AWB)のヘイミッシュ・スチュアート、オリジナルとしては唯一となる99年のソロ・アルバム『SOONER OR LATER』がそれである。AWB解散後はポール・マッカートニーのソロ・ツアーで参謀役を務めたことが有名だけれど、AWB再結成には与せず、我が道を行くことに。ネッド・ドヒニーと一緒に来日したり、最近はリンゴ・スターのオールスター・バンドにも加わって、結局ビートルズの生き残り組2人と共演するという稀有な存在になった。

今になって何故この盤が再発されるのか、最初は少々謎だったけれど、リリース元が英Demonなので、おそらくはご本家AWBの一連のアナログ・リイシューに連なるモノだろう。でも久しぶりにコレを聴いて、「あれ〜、こんなに良かったっけ?」なんて…。

まぁ、ヘイミッシュ自身、ギターもベースも弾きこなし、ファルセットで歌えば天下一品のヒトなのに、今イチ職人肌というか、脇役タイプみたいで。だからAWBみたいに、スター不在のバイ・プレイヤー集団の中でひと際輝く。このアルバムも、そういう燻し銀のような楽曲集。1曲1曲はどれも魅力的なのに、ドンズバのキラー・チューンに欠ける。それが今回、アナログになって魅力を増したように感じたのは、おそらくCDに収録されていた14曲を絞り込んで、10曲にシェイプ・アップしたからだろう。

CDは<Soon>で始まって、中盤に<Or>、そしてラストに<Later>という曲を配置してアルバム・タイトルになるお遊びがあったが、今回アナログに生き残ったのは<Or>だけ。曲順も大胆に再構成していて、自分が当時から大好きだった<La La Land>が、リスナーの掴みどころである2曲目に置かれた。A/B面を引っ繰り返すのが前提のソング・オーダーになっているのだ。もっとも新オープナーの<Midnight Rush>はヘイミッシュとブルーイ、リチャード・ブルの共作。<Makin' It Up>はヘイミッシュとジョン・リンドの共作、<It Is What It Is>はヘイミッシュとリチャード・ダービシャー(元リヴィング・イン・ア・ボックス)、フランク・マスカー(ザ・デュークス)の共作、そして<I Don't Wanna Be A Rock>はヘイミッシュとグラハム・ライル(元ギャラガー&ライル)のペンと、それなりの共作陣を取り揃えている。

99年にはいささか大人しく感じられたバンド・サウンドも、ヨット・ロックやシティ・ポップ人気で少し感覚が研ぎ澄まされたか、より懐深く滋味に感じられて。マニアな方は、CDとの聴き比べが一興かも。