ブレバタ
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大好評を呼んで映像化も為された昨年10月の50周年スペシャル・ライヴ『ブレッド&バター with SKYE〜あの頃のまま〜』の続編を観に、EX THEATER ROPPONGIへ。本来はゴールデン・ウィーク中の開催予定だったが、コロナの緊急事態宣言でこの日にスライド。それでも出し直しチケットは即完だったらしいから、SKYE(林立夫・小原礼・鈴木茂・松任谷正隆)を含め、まったく大したオヤジたちです。

インターヴァルを挟んでの正味2時間、いつのもまったりブレバタ・テイスト。ホールで演っても、小さなライヴ・ハウスやカフェで演っても、幸矢&二弓兄弟の周囲には、いつもホンワカとゆる〜い時間が流れる。それを心地良く感じる人たちが、ライヴに集まってくるのだ。セット・リストもいつもの定番曲を中心に、多少入れ替わりがあるくらいで。2部のアタマでSKYEの2曲が披露されたのも、前回同様。ただしコチラは演る曲が変わっていて、急遽ブレバタがコーラス参加する一幕も。SKYEのアルバムは、年末近くにリリースされるようだ。

…とはいえこの日は、ちょっとしたトラブルが多く。それこそ2曲目<湘南ガール>のイントロが合わずにやり直したり、1部ラスト<TELL ME>やアンコール<特別な気持ちで>のケツがグズグズになったり…。どうも、歌っていて気持ちよくなってしまった幸矢&二弓兄弟が、各種キメ事をスッ飛ばしてしまうのが原因みたいで、SKYEのバッキングが収集つかなくなって、各人 手探りで着地点を探すという… だから音からは “アレレ、何が起こっているんだ?” というのが伝わってくるが、見てクレはみんな平然。さすが、日本を代表するトップ・ミュージシャン集団である。しかも兄弟に至っては、ちょっとバツが悪そうな面々とは違って、「どうかしたの?」というくらいに悠然としていて、思わず吹き出しそうに…

でも、だからといってギスギスしたりせず、まぁ、そんなコトもあるよねェ〜、というのがブレバタの空気感。50年のキャリアがそうさせた、というより、この兄弟は昔からこうなのだろう。自分がお二人と面識ができたのはココ十数年のコトだけれど、それが容易に想像できる。バックステージでお会いしても、「いやぁ、今日は間違ってばっかりでスミマセンねぇ」(二弓さん)とテレ笑い。でもそれに目くじら立てるようなヒトは、ブレバタ・ファンには皆無だろう。直近で足を運んだ某ライヴでは、一部熱狂的ファンの傲慢さを目の当たりにしてしまっただけに、この違いは何なんだろう、と考えてしまうわ。

さて、先週ずっとご紹介していたシティ・ポップ系の再発シリーズ【ビクター・マスターピース・コレクション】にも、ブレバタが2作、ラインアップされている。ビクター傘下に“日本のCTI”を標榜して創設された aosisレーベルからの移籍1作目『SUMMER KNOWS』(04年)と後続の『SKY』(05年)だ。

『SUMMER KNOWS』は、名曲<ピンク・シャドウ>や<Monday Morning>のセルフ・カヴァーや洋楽ポップ・スタンダードを数多く収録。レーベル・プロデューサーである新川博の制作・アレンジの下、今剛、松原正樹、鈴木茂、小原礼、高水健司、高橋ゲタ夫ら参加している。一方『SKY』は、Light mellowコンピにもセレクトした<隠れ場所>を含む、全曲オリジナル楽曲のアルバム。引き続き新川博のプロデュース&アレンジで、村上"ポンタ"秀一、松原正樹、今剛、山木秀夫らが参加している。

ブレバタというと初期のBlow Up/コロムビア期、そして『LATE LATE SUMMER』や『MONDAY MORNING』など名盤を生んだアルファ期の印象が強いが、このaosis時代は、『SKY』の全曲オリジナルが象徴するように第3のピークを迎えていた。80年代後半〜90年代はレーベルの意向に従ったり、打ち込みにトライするなど、らしくない面が少なくなかったが、aosisではレーベルの指向性、ブレバタの魅力を知り尽くした新川のアレンジがバッチリ マッチ。アコースティックなオーガニック・サウンドをベースに、マイルドなラテン・フレイヴァーをまぶしつつ、ブリージーなコーラス・ワークの妙を耳ざわり良く届けてくれる。既にリリースから15〜6年が経過しているけれど、現在のブレバタに最も近いオリジナル・アルバム群が、このaosis2作と言えるだろう。ブレバタ・ファンは聴き逃し厳禁の会心作だ。