andreas aleman

気がつけば もう7月。コロナ影響下のまま、2021年も半分が過ぎてしまった。幸いライター稼業には直接的影響が少ないものの、外タレの来日は皆無だし、間接的余波は被らずにいられない。感染対策やワクチン、オリンピックに関しては憤るコトが少なくないけど、今は “Let it flow”の心境かな。自分の意志を以って、流れに乗るも自由、降りるも自由。でも足元を掬われては元も子もない。昨年9月に発売した『AOR Light Mellow Premium 01』の続編は、予定よりちょっと(だいぶ?)遅れているけど、何とか秋には出したいゾと。

さて【Light Mellow Searches】from P-VINEでは、北欧に潜んでいた近年のAOR名盤にスポットを!…と、アンドレアス・アレマンの2012年作2nd『IT’S THE JOURNEY』を日本発売。オンタイムで手に入れ、その充実した内容に驚いていたが、当時の日本のAORシーンは北欧に対する認知度がまだあまり高くなく、オーレ・ブールドが脚光を浴び始めた頃。ピーター・フリーステットやステイト・カウズには本場L.A.の著名ミュージシャンのゲスト参加があったワケで、そうしたトピックのないニュー・カマーを紹介するのは難しかった。

でも10年近くが経って、状況が一変。ヨット・ロックの名の下に、いわゆるAOR/ウエストコースト・スタイルのサウンドが注目されるようになった。
「ゆっくり長い時間をかけてですが、確かに私たちは注目を集めるようになってきました。このタイプの音楽のレガシーを発見し、大切にしている新しいミュージシャンやアーティスト、ソングライターが増えてきたと思います」(アンドレアス・アレマン)

アンドレアスのフェイヴァリット・アーティストは、マイケル・マクドナルドとマイケル・ラフ。ヘェ〜!と驚く人が多いかもしれないが、北欧でのマイケル・ラフの人気は殊のほか高く、スカンジナヴィア・エリアでしか流通していないアルバムもある。他にもアル・ジャロウやビル・チャンプリン、TOTO、アース・ウインド&ファイア、タワー・オブ・パワー、スパイロ・ジャイラ、イエロージャケッツなどが好き。目標とするシンガーは、マイケル・マクドナルドはもちろん、レイ・チャールズ、ダニー・ハサウェイ、スティーヴィ・ワンダー、それに先輩格のフランク・アダールを挙げてくれた。

全体的に小気味良いライトなファンキー・チューンが多いが、その中に美味なAORチューンやスキャットが印象的なアーバン・ミディアムが挟まれ、アルバム・トータルで抜かりナシ。ほんのりゴスペル香が漂う<I Knew It Was You>は、スウェーデンのトップ・ミュージシャンでCWF(チャンプリン・ウィリアムス・フリーステット)にも参加しているステファン・グンナルソンとの共作曲。アンドレアスは彼の曲が好きみたいで、1作目でも取り上げていた。また<Right Out Loud>は、フュージョン系kyd奏者グレッグ・カルーキスや自らのユニット:サークル・オブ・ソウルで歌っていたロン・ボーステッドとの共作。ソロ・アルバムも出しているが、L.A.でのロンはむしろマスタリング・エンジニアとして知られており、ローリング・ストーンズやイーグルスと仕事をしている。アンドレアスはL.A.を訪れた時に彼と知り合い、1stのマスタリングを依頼。この2ndでは共作に至ったそうだ。

早耳のAORマニアなら、12年時点でこのアルバムを聴いていたと思うが、遅れて出す日本盤にはボーナス・トラックを追加。16年にシングルとしてデジタル・リリースした3曲を収録している。しかもコレがアルバム本編以上に強力。<Livin' With A Stranger>と<Everybody Join The Party>は、プリンスあたりが好みそうなソリッドなファンク・チューン。<Somehow I Found Home>は絶品のミディアム・アーバン・コンテンポラリー。

この『IT’S THE JOURNEY』以降にも、X'MASアルバムやピアノ・デュオ作を出しているアンドレアス。「次は再びファンキー/ウエストコーストのアルバムを創りたい」とのことなので、それまではこのアルバムを堪能するのが、北欧AOR好きの正しい道だな