fab bond with jin kajiwara

訃報が続いてしまったので、今回はサクッと活きの良いタマを。ギターとチェロをプレイする変わり種の敏腕ミュージシャン:伊藤ハルトシを中心に、今やスッカリ山下達郎バンドの屋台骨を支えているドラマー:小笠原拓海、しなやかなベースで定評のある川内啓史の音大ジャズ科同窓生3人から成るFab Bondに、その講師として関わった梶原順が乗っかったアルバム『TIME TREE』。梶原さんが参加していた角松敏生の40th周年ライヴ@横浜アリーナで先行発売されていたけれど、密になってたグッズ販売はスルーして、普通にポチリ。入手してまだ1週間ながら、ウォーキングのBGMに使ったりして、ちょっとしたヘヴィ・ローテーション状態。最近こうした ゆったりした深いグルーヴと程よいテンションのアドリブ・ソロを聴かせる和製フュージョン ・バンド、あまりお目(耳)に掛かれていないなぁ〜、と。

Fab Bondにとっては、コレが3枚目のアルバム。けれどこれまでの2作はオフィシャル・サイトとライヴの現場での手売りだけだったようで、マトモな流通に乗ったのは初めてらしく、それに相応しい力作になっている。

トリオ編成ゆえに、曲ごとにいろいろなゲストを呼んで、コラボしながらアルバムを作ってきた彼ら。でも今回は、メンバーみんなの師匠である梶原順を招いて、ガップリ四つに組んでの制作。この顔合わせは、1stアルバム『SO MUCH FUN』の<Gift>という曲でも既に実現していたし、ライヴでも共演。カナザワも2年前に高円寺JIROKICHIでそれを堪能した(その時の Live Report )。

Fab Bond+梶原順というフォーマットは、梶原さんがブッチャーこと故・浅野祥之と組んでいたJ&B(リズム隊は松原秀樹と沼澤尚)と同じで、どうしても2本のギターの絡みを期待してしまう部分がある。でもJ&BとFab Bondの持ち味は、似て非なるモノ。松原・沼澤コンビはゴツゴツしたファンキー・グルーヴで重量感を醸し出すが、ジャズ科出身のFab Bond チームはスマートで変幻自在。梶原さんの立ち位置も、ブルージーな対ブッチャーだとテクニカルに聞こえるが、トリッキーなプレイが得意な伊藤ハルトシ相手だと、ずいぶん端正に響く。そして熱めのギター掛け合いなんか期待しがちな聴き手をはぐらかすように、アコースティックなバッキングを多用。これもギターが2人いればこそのアレンジなワケで、なるほどそう来るか、と感心する。そういや、前述<Gift>もそんな曲だったなぁ〜。

そもそもギターが2本のインスト・バンドというだけで、ノリの良い曲でギターがハモッたり絡んだりのインター・プレイを予測しちゃうのが間違いで。その点彼らは楽曲至上主義的で、丁々発止の激しいプレイは排除。何より曲メロにフィットするアンサンブルを構築し、それに見合った適確なプレイをする。キーボードレスとはいえ、チェロというユニークな武器もあるわけで、こけおどしは必要ないのだ。特にアルバム中盤でミディアム〜スロウ系を連発させちゃうあたり、涼やかに大胆。ボズ・スキャッグス<JoJo>のカヴァーも、歌メロを追うのではなく、原曲のギター・カッティングと単音オブリを発展させる形でリフを創り、そこにアドリブを乗せて小粋なギター・インストに仕立てている。

そしてラストにリズム・ギターでご機嫌な対決を果たす<Just For Fun>でエピローグ。師弟関係を超えたシュアーなバンド・サウンドに、してやられる。こりゃーまたライヴも観に行かなきゃ。

Fab Bond Official Site