terry sampson

知る人ぞ知る米国人ソングライター、テリー・サンプソンの1stソロ・アルバムが、まもなく日本リリース。アル・ジャロウにフィル・ペリー、カール・アンダーソンらに歌われた<God's Gift To The World >を始め、ケニー・ロジャースやニコレット・ラーソンにも楽曲提供。驚くコトに、ペニーこと当山ひとみにも曲を書いていた知られざるメロディメイカーが、いまココにヴェールを脱ぐ。

テリー・チャールズ・サンプソンは1958年、ミシガン州グリーンヴィル生まれ。シンガー経験のある父親とジャズ好きの母親を持ち、大卒後にL.A.に出て、アルバイトで喰い繋ぎながら音楽出版社の契約ライターになった苦労人だ。その最初の曲が、コメディ映画『National Lampoon’s Vacation(ホリデーロード4000)』(83年/主演:チェビー・チェイス)に採用された<Summer Hearts>なる楽曲。プロデュースがマイケル・オマーティアン、歌ったのはニコレット・ラーソンである。ただし彼女はお仕事モードで、その先の進展はなかったそうだが…。

しかしこれを機に出版契約を得て、作詞家マイケル・ハイメルスタインを紹介され、出世曲<God's Gift To The World>が生まれる。最初に歌ったのはフィル・ペリーで、彼のソロ・デビュー・アルバム『THE HEART OF THE MAN』(91年)にシー・シー・ワイナンズとのデュエットで収録。すると約半年後にアル・ジャロウがライヴで歌い始め…。アルのレコーディングは99年作『TOMORROW TODAY』(ヴァネッサ・ウィリアムスとのデュエット/ポール・ブラウン制作)と遅かったが、それより早くアルバムに入れたのがカール・アンダーソン。GRPからの好盤『HEAVY WEATHER SUNLIGHT AGAIN』に、テリーの単独作<Love'll Hold My Baby Tonight>と2曲一緒に取り上げたのだ。アレンジは共にトム・キーン。更に、ゴスペル系ジャズ・ハープ奏者ジェフ・メジャースがR&Bシンガー:ケリー・プライスをフィーチャーして取り上げており、これは07年にビルボード・ゴスペル・チャート3位を記録、ASCAP(=米著作権管理団体)のリズム&ソウル賞にも輝いた。他にも行くつかカヴァーがあり、もちろんこのテリーのソロ・デビュー盤にも彼自身の作者ヴァージョンが入っている。

<God's Gift…>に並ぶハイライトが、ケニー・ロジャースに提供した<See Me Through>。ジャズ・シンガー/作詞家のロレイン・フェザーと共作曲している<Brave New Love>は、もともと彼女が在籍していたコンテンポラリー・ジャズ・ヴォーカル・グループ:フル・スウィング用に書いたが、グループの解散で宙に浮いていたという。また<(Let’s Make) A Million Dollars>は、ピーター・セテラがいたジ・エクセプションズ、ポール・コットン(後にポコ)とのイリノイ・スピード・エキスプレス、そしてレア・グルーヴ方面で人気のファビュラス・ラインストーンなどで活躍したカル・デヴィッドが、92年の初ソロ作『NEVER A DULL MOMENT』でピックアップ。この曲はテリーが自画自賛するお気に入りでも。

ちょっと変わった『E, Just E』というアルバム・タイトルは、彼の父親の名前に由来。テリーの父はミドル・ネームではなく、代わりにミドル・イニシャルを与えられ、自分の名前を誰かに伝えるたび、“e, just e” と説明しなくてはならなかった。それを面白がると同時に、亡父への弛まぬ愛情を示している。

オリジナルは自主制作だっただけに、日本ではほとんど流通しなかったが、今回はテリー自身の手で収録曲の差し替え・追加が行なわれ、3曲が初披露。ソングライターとして40年近いキャリアを持つが、成功するか否かは才能と運、と達観していて、あくせくしたところがない。混沌とした今の世をうまくやり過ごすのは、きっとこの心境が大事なのかも…。