shigeru suzuki_cosmos51

08年から続いていた鈴木茂本人によるリミックス再発シリーズも、いよいよ最終章。クラウンのパナム・レーベル最終作『COSMOS '51』が登場した。それこそ『BAND WAGON』なんて何枚持ってるのよ?(アナログ、初回CD、紙ジャケ、リマスター、リミックス)という感じだが、『COSMOS '51』はまだCDで2枚目だからヨシとしよう。オリジナル・リリースは79年。ソロ作としては5枚目。当初はカセットだけで発売されたハックルバックを入れると6枚。4年間のリリースとしては、かなりの仕事量である。

でもその5枚を順に辿って聴いていくと、当時の茂さんの歩み、何をやりたかったのかがすぐ分かる。実に正直な人だ。そしてこの時の彼のスタンスは、ギタリストでも、もちろんシンガーでもソングライターでもなく、アレンジャーという志向だった。

楽曲的には筒美京平の影響大。良くも悪くも、筒美が作り上げた洋楽パクリの文化を見事なまでに踏襲している。<君はだまっていても嘘をつく>はそのままリンダ・ロンシュタットだし、<あと5歩で君のくちびる>はエモーションズ、<幻花(まぼろし)>はボビー・コールドウェル、<HEY! WOMAN>はTOTO、<BAD DREAM>にはビリー・ジョエル、という風に。他にも細かいパートごとに、アチコチ引用の跡が残っている。でもそれが全然イヤラしくないというか、愛情の籠もった目線の先を見てしまうことで、なんかホッコリしてしまうんだな。

インタビューの中でも、「ロクに寝ないでスタジオの仕事をしていた時期」とあるから、「あ、カッコイイ」と思ったモノを自分の中に昇華していく時間が取れず、ある種パズルを組み上げていくように、そのまま自分のアレンジに組み込んでいったのだろう。筒美の場合は、絶対に大ヒットを出さねば!という強迫観念と作曲家としての矜持で楽曲の完成度を極限まで突き詰めていったと思うが、茂さんの場合はイイ意味でもっとユルい。でもそこに「あぁ、好きだったんだなぁ」というシンパシーが入り込むスキが生まれる。

作詞には松本隆と仲畑貴志、演奏陣には高橋幸宏/ロバート・ブリル(ds)、小原礼(b)、坂本龍一/佐藤凖(kyd)、斎藤ノブ/ペッカー(perc)などが参加。ホーンとストリングス、コーラスはL.A.録音で、トム・スコットやジェリー・ヘイ、アーニー・ワッツらの名が。弦はデヴィッド・キャンベル。ボーナス・トラックには新録の<Unchained Melody>のカヴァーも収められている。リミックスは奇をてらわず、オーソドックスに聴きやすさを追求した感じ。バンド・サウンドのドッシリ感が実にイイ。

自分が初めてこのアルバムを聴いたのは、80年代に入ってから少し時間を遡って。当時はその引用の部分が鼻につき、『BAND WAGON』や『LAGOON』に及ぶべくもないと思った記憶があるが、いま聴くと鈴木茂というミュージシャンの立ち位置と葛藤が見えてきて、愛おしく感じる。この後の彼は極端な寡作家となって今に至るが、やっぱりウソがつけない実直なミュージシャンなのだと改めて。