more than paradise

うだるような暑さがやってきた。こういう時は外に出ず、涼しい部屋で書き仕事をしているに限る。そして今度は頭まで茹だってきたら、脳をクールダウンさせてくれる音楽を聴くのだ。それが今は、30年ぶりに復活したモア・ザン・パラダイスのニュー・アルバム『ANOTHER HEAVEN』、ってちょっと出来過ぎ?

モア・ザン・パラダイスは、鈴木雄大、景家淳、A-miというメンバーで91年にデビュー。『MORE THAN PARADISE』『LOVE PARADE』の2枚のアルバムを出している。ユニット名通り夏全開のサウンドが特徴で、ブラジリアン・フレイヴァーを絡めたフュージョン・ヴォーカルを聴かせた。バックにはジンサク(神保彰+櫻井哲夫)、増崎孝司、松原正樹、山田秀俊らが参加。サウンド・プロデュース&アレンジを船山基紀が担当したことからも、その音の完成度の高さが分かるだろう。

そのモア・ザン・パラダイスが、新たに村瀬由衣が加入して4人組として再スタート。あの頃のサウンドをそのままナチュラルに蘇らせつつ、各メンバーのキャリアや豊富な経験を積み上げ、ひとまわりもふたまわりもスケールアップした姿を見せてくれる。3声のヴォイシングに声がひとつ新たに加わったため、ハーモニーの妙も大きな聴きドコロに。アントニオ・カルロス・ジョビン<Dindi>のカヴァーでは、アコースティック・ギター1本をバックに、緻密に構築されたヴォイス・タペストリーを聴かせてくれる。

今回は前2作に辣腕を振るった船山基紀の他に、メンバーの鈴木雄大と景家淳、山田秀俊、そして新たに安部潤がアレンジに参戦。バックにも櫻井哲夫や増崎孝司、川口千里らがクレジットされた。

シティ・ポップ復興の大号令がかかっている今、夏全開サウンドのモア・ザン・パラダイス復活は実にタイミングが良い。でもコレは、今またシティ・ポップ・ブームがやってきたから その波に乗ったワケではなく、偶然にタイミングが一致したものだと思っている。もちろんメンバーたちの目線や触覚が、そろそろああいうサウンドが欲しいよね〜、なんて空気感を薄々察知していたことはあるだろう。でもそれは、サポートや裏方、CMや劇伴などで音楽を創り続けてきた4人が、そろそろ自分たちの音楽を演るべし、と立ち上がった証しでもある。

雄大さんや景家さんとは個人的にご縁があるし、取り巻きにも知り合い多々。だから応援するってワケじゃないけど、真面目にイイ音楽を創ってみんなに届けようと頑張っている人たちには、同じ気持ちを持った、いわゆる同志が集まってくる。それがモア・ザン・パラダイスの魅力なんだな、きっと。