john mayer_sob rock

いつもニュー・アルバムを出す度に、ちょっとしたサプライズを運んでくれるジョン・メイヤー。シンガー・ソングライターだと思っていたら、ラリー・カールトンやエリック・クラプトンと渡り合うほどギターが上手く、アンサンブルの人だと思ったらブルージーなトリオを組む。そうかと思えば、思いっきりカントリーに触れてみたりも。それがデビュー20周年の今回は、80'sだ。しかもリード曲の<Last Train Home>は、もろにTOTO。もちろん彼らほど緻密な作りじゃないが、シンセのサウンド・メイクとか、かなりソレっぽい。実際に弾いているのもグレッグ・フィリンゲインズで、パーカッションはレニー・カストロだったりする。

まぁ、確かに予兆はあった。前作『THE SEARCH FOR EVERYTHING』の<Still Feel Like Your Man>は、マイルドなAOR調の楽曲だったし、アルバム全体が、何処か甘くメロウなトーンに包まれていた。本作にも収録された18年の<New Light> はまるでフリートウッド・マック。19年に出た<Carry Me Away>では、チャカポコしたヤオヤ(TR-808)っぽい打ち込みが鳴っていた。新作のアルバム・タイトル『SOB ROCK』とは、咽び泣く、すすり泣くロック、という意。何がどう咽び泣くのかは知らないが、ヒップホップやヒップホップ・ソウル、ダンス・ポップが主流になっている現在の全米チャートの傾向とは、正反対のベクトルを向いているのは明らかだろう。

まぁ、サスガにシンフォニックなシンセが舞い降りてくるのはオープナーの<Last Train Home>くらいだけれど、70年代のシンガー・ソングライター的スタイルを80年代っぽい音像感で表現。それでいて、古臭くはなく、オーガニックな清涼感を醸し出す。そこにちょっと枯れたギター・ソロが乗ってくれば、音楽の心を解する方なら、思わず琴線を乱される、というモノだ。

ちょっとジョージ・ハリスンっぽい<Why You No Love Me>、ダイアー・ストレイツ/マーク・ノップラーを甘くしたような<Wild Blue>とか、もう堪らん…

ライナーに拠れば、ジョンは「コロナによるロックダウンがなければ、このアルバムもなかった」と言い、「そのサウンドには、安全な時代を思い起こさせるブランケットのような側面がある」と語っている。まさに現在進行形のヨット・ロック。もしかしたら今後は、米国ではAOR的なスタイルをソブ・ロックと呼ぶようになったりして。