aretha box

アレサがなくなって3年。コロナ禍で遅れ気味だった各種追悼企画が、いろいろ出揃ってきた。その皮切りが、既にこのブログでもレビューしたライヴ・ドキュメンタリー映画『AMAZING GRACE』。そして日本では11月に公開が決まったジェニファー・ハドソン主演の伝記映画『RESPECT』。その公開に合わせてリリース時期を調整していたのが、インディ・デビューからの60年越えのキャリアをフル・カヴァーした アンソロジー4枚組ボックス『ARETHA(アレサ - ザ・グレイテスト・パフォーマンス)』、全81曲5時間超。このヴォリュームなので、何度かに聴き分け、ようやく全曲をチェックすることができた。

キャリアもアルバム数も多いから、当然ベスト・アルバム的な編集盤も多々。黄金期のアレサを掻い摘んで、というなら、ライノが92年に組んだ4枚組『QUEEN OF SOUL:The Atlantic Recordings』がイイのかもしれないが、自分はアリスタ期の彼女にもオンタイムで親しんできたし、既にレジェンドだったアレサを、ルーサー・ヴァンドロスやナラダ・マイケル・ウォルデンらがどう時代の音にフィットするよう演出していたかも興味深く見ていたので、アトランティック時代だけで済ませたくはない。

でも、このアンソロジーで全キャリアを俯瞰すると、改めてアリサの歌の磁力の強さに圧倒される。初期コロムビア期のようにジャズやスタンダード、ポップスを歌おうと、ロック勢に絡まれようと、どんなスタイルでもすべて、自分側に手繰り寄せて、アレサの歌にしてしまう。普通に歌の上手いシンガーだと、器用なところを見せて自分を側に合わせてしまうものだが、彼女は全然自分を曲げない。ポップスやスタンダードのようにメロディがハッキリしていたり、ジャズのように丁寧に歌い上げるスタイルは決して好みじゃないはずだが、こうした編集盤ではそんなトコロは出てこない。ボサノバ・アレンジの<Day Dreaming>とか、アレサ初心者は相当に驚くはずだ。それでもやっぱりアレサらしいエナジー・ヴォイスは、ソウルやR&Bナンバー、キャパシティの広いバラードでこそ全開となる。元々ポール・マッカートニーがアレサを想定して書いたという<Let It Be>とか、初蔵出しの<You Light Up My Life>(デビー・ブーンの全米No.1ヒット)とか、もうサイコーで。

この<You Light Up My Life>のように今回は発掘音源も結構多くて。デモ音源、オルタネイト・ヴァージョン、別テイク、別ミックス、別エディット、UKシングル、ワーキング・テープの音源とか、20曲近い未発表音源が収録されている。加えて、トム・ジョーンズ、レイ・チャールズ、スモーキー・ロビンソン、ディオンヌ・ワーウィック、ユーリズミックス、ジョージ・マイケル、メイヴィス・ステイプルズ、ルー・ロウルズ、ロナルド・アイズレーとの共演も集成。これまでレコード化されていなかったTV番組音源からのチョイスもあるようで。<Think>はチャンとブルース・ブラザーズの映画のサウンドトラックから。

そしてラストを締めるのは、2015年、キャロル・キングがケネディ・センター名誉賞受賞式に出演した時の<A Natural Woman>のライヴ・パフォーマンス。アレサ自身は本調子ではなかったが、それを目の当たりにしたキャロルが大興奮し、同席したオバマ夫妻も涙ながらに口づさんでいた映像をご覧になった方も多いだろう。そしてコレが、アレサ最後のライヴになったと言われる。

とにかく、さすがにライノらしい気合の入った編集盤。20曲の縮小盤も出ているけれど、初心者以外はシッカリとボックスでご堪能あれ。