laurence elder 2

ランディ・ブレッカーやアル・ディメオラが賛辞を寄せたデビューから14年。滋養たっぷりのピアノと味わい深いヴォーカルを聴かせるAOR〜コンテンポラリー・ジャズ・アクトが戻ってきた。ニューヨーク生まれのローレンス・エルダー、その人である。音楽や演劇の専門学校でジャズを学び、卒業後はワシントンD.C.の著名ビッグ・バンドで活躍。バンド・リーダーを張るまでに成長して高級レストランやナイト・クラブで演奏していたが、自分でブッキング・マネージメントを開いてセレブなパーティーやイベントでのプレイを繰り返すうち、そうした営業的な演奏活動に疑問を感じるように。そこで優秀なミュージシャンを多数輩出しているマイアミ大学パフォーミング・アーツ科に再入学。ジャズ・ピアノの修士課程を卒業して、マイアミで活動を始めた。要するに、極めて真面目なリアル・ミュージシャンなのである。

そのマイアミでは、ティト・プエンテ、ネスター・トレース、ルーベン・ブラデス、パキート・デ・リヴェラら、ラテン・ジャズの巨匠たちをサポートする同年代ミュージシャンとプレイするように。今作のレコーディング・メンバーの多くも、そうした彼のワーキング・バンドの面々。中にはラテン・グラミーを数回受賞している実力派もいる。

1stアルバムに顕著だったブルース・ホーンズビーの影響は、以前よりも濃厚に。コンテンポラリー・ジャズ色が薄まった分、ほのかにアメリカン・ルーツ・テイストが強まったからだ。何とローレンスはマイアミ大で、ブルースと同じ人物にピアノを師事していたそうだ。そしてキース・ジャレットやハービー・ハンコック、ビル・エヴァンスといった伝統的ジャズ・ピアニストを基本としながら、ベン・フォールズやジェイミー・カラム、ジョン・メイヤーといったシンガー・ソングライターにも惹かれていった。特にスティングには大きく感化されたという。

14年ものブランクが空いたからといって、音楽から離れていたワケではない。それはむしろ真逆で、数多くのプロジェクトに参加し、曲を書いたり、バンドでツアーしたり。更に大学で教鞭をとるようにもなったという。それで自分のアルバムを作る余裕がなかったというのが真相らしい。そして、イザ自分の作品に取り掛かっても、なかなか作業は進まなかった。収録曲それぞれに明確な意味があって、コンセプト的に連携している、そういう強力な楽曲群が必要だと考え、曲作りと制作に多くの時間を費やしたのだ。それほどトコトン誠実に音楽に向かう人なのである。

当然、収録曲はすべて書き下ろし。唯一の例外が、シールズ&クロフツが72年に全米6位にした名曲<Summer Breeze>である。もともと好きな曲だったが、今回のアレンジを思いついて、ジックリあたためていたそうだ。ギターは、フィリピンのジャズ・フェスに出た時に知り合ったというマイク・スターン。そして学生時代からの知り合いだというランディ・ブレッカーが、1曲、ミュート・トランペットを吹いている。

こういうピュアでポジティヴなミュージシャンの演奏には、自ずと人となりが投影される。こういうのは、いつでも歓迎してあげたいな。