joni mitchell_wild things

再びユニバーサルミュージック【入手困難盤復活! ロック黄金時代の隠れた名盤〈1976-1985編〉】に戻って、ジョニ・ミッチェルの82年作『WILD THINGS RUN FAST』。自分の中では、コレとこの次の『DOG EAT DOG』はセットのようなモノなので、1枚だけ抜かれると違和感があるが、『BLUE』に代表される初期フォーク作ばかりが再評価されているのはちょっと悲しく、こうしてリイシューされたことにナイス・ジョブと。ま、ジャズ期と言われる70年代半ばの『COURT AND SPARK』や『THE HISSING OF SUMMER LAWNS(夏草の誘い)』が一番好きなのは変わらないんですけど…。

で、このアルバムに始まる新興(当時)ゲフィン時代は、ジョニのキャリアではロック期とされている。確かに彼女にしてはビックリするぐらいのロック・チューンもあるが、一般論で言えば、ロックと呼ぶにはあまりに変幻自在でコンテンポラリー・ジャズ寄り。やはり、恋仲だったと言われるジャコ・パストリアスやパット・メセニーとの蜜月時代を経てこそ至った境地であり、音楽スタイルとしてのロックではなく、精神面でのロックン・ロールの意だったのだろう。ひと回り以上年下の若手ベース・プレイヤーだったラリー・クラインと恋に落ち、一気に結婚まで駆け抜けていったのも、思慮深い彼女にしたら、相当にロックン・ロールな出来事だったと思う。

ベースのスタイルがジャコっぽいので、よく皮肉られたが、その後のラリー・クラインが一貫した音楽性で個性派プロデューサーとして成功するのを知れば、そういう下世話話ではハナシでないコトが分かる。ドラムも『COURT AND SPARK』周辺で叩いていたジョン・ゲランだし、ウェイン・ショーターやラリー・カールトン、当時新人のラッセル・フェランテらが参加しているのも、音楽的にはジャズ期の延長にある。参加ミュージシャンでいうなら、スティーヴ・ルカサーが4曲ギターを弾いているのに気を取られて、ロック承認してしまうんだろうな。

でもココにいるルークは、まるで別人。確かに縦横無尽に弾いてはいるが、ジョニの手玉に取られてか、あくまで掌の中だけで転げ回っているイメージ。フレーズの組み立て自体は自由度高そうだけど、弾く箇所自体はかなり限定され、弾き過ぎたらやり直し。トーンやヴォリューム感、ヴィブラートの賭け方やアーム・ダウンなどは、すべてジョニの指定と思われる。その抑制的な空間プレイは、まるでルカサーっぽくない。その分、やはり4曲に参加してギターを分け合うマイケル・ランドウは、このジョニの手法に大きくインスパイアされたのではないか。現にこのアルバムのギター・パートは、後年のランドウを強く髣髴させるもの。クレジットを見ずに聴いていると、ルークもランドウも、ジョニに同じようなプレイ・スタイルを強いられている気がする。それに我慢ならず、ドンドン節操なく弾きまくるようになっていたルークと、逆にポスト・ルークから脱して自分独自のスタイルを築いていったランドウ。特にランドウは、自分の演奏スタイルを変えていく契機が、この時のジョニとのセッションだった気がしてならない。何曲か叩いているヴィニー・カリウタも、ジノ・ヴァネリやペイジスに次いで印象的なプレイをしている。

その他、ライオネル・リッチーがカメオ・ヴォーカルで参加していたり、ジェイムス・テイラーやケニー・ランキンがコーラスを取る楽曲もあって、話題は盛り沢山。リバーブが効いた硬質なサウンドは如何にも80'sっぽいが、明るい作風はこの時期ならでは、だ。

ユニバーサルミューック『入手困難盤復活!! ロック黄金時代の隠れた名盤」オフィシャルサイト