paul carrack 021

コンスタントに独自の活動を続けているポール・キャラックから、また新しい歌声が届いた。自分がポール・キャラックの名前をインプットした最初は、確かロキシー・ミュージック『MANIFEST』(79年)だったと思うが、本気でその歌声に魅せられたのは、マイク+ザ・メカニクスのデビュー盤(85年)。それ以降ポールのソロ作は、企画モノを除いて、ずーっとリアル・タイムでフォローしている。ホント、実直で味わいのある職人ブルー・アイド・ソウル・シンガーの歌声。新しい発見など、まずないし、力を込めて大上段に構えることもない。至極淡々と、リラックスして…、でも心の底から安心できる、迷った時に戻って行きたくなるような、そんな空間を作ってくれる声だ。

80年にソロ・デビューし、複数のレコード会社を渡り歩いた後、自分のレーベル Carrack-UKを立て上げて20年。およそ2年に1枚のペースでニュー・アルバムを作り、その間にライヴ盤や企画作をリリースするのが、ずーっと彼のルーティンだった。エリック・クラプトンのバンドにも、しばしば参加している。ところがこのパンデミックの影響で、そのペースに狂いが生じた。以前から付き合いのあるドイツの名門SWR ビッグ・バンドと共演したセルフ・カヴァー・アルバムを2020年に発表した後、ツアー中断で空いた時間をすぐにアルバム制作に転換。そこでできたのが、この『ONE ON ONE』だ。

レコーディングは、ほぼポールのホーム・スタジオに於けるワンマン録音。メカニクスからの同僚ピーター・ヴァン・フックをアソシエイト・プロデューサーに置き(パーカッションも)、あとは愛息が1曲ドラムで、ロビー・マッキントッシュも1曲ギターを弾いている。クラプトン・バンドで一緒の女性シンガー:ミッシェル・ジョンはコーラスで。そして随所でご機嫌なラッパを聴かせているのが、ついにこの前(9月24日)亡くなったピー・ウィー・エリス率いるホーン・セクション。

とにかく、飾り気ナシにオールド・タイミーなR&Bソングの数々なのに、かなりご機嫌にさせてくれる一枚で。そのスタンスは、例えば13年作『MEMPHIS』に始まったボズ・スキャッグスのブルース3部作にも共通するところ。でも実際はポールの書き下ろしの新曲ばかりで、ラストの<Behind Closed Doors>のみ、カントリー・シンガー:チャーリー・リッチの73年のヒットをカヴァーしたものとなる。ビル・ウィザースを髣髴とさせる<A Long Way To Go>、ジョー・コッカーならどう歌うかな?なんて思ってしまうバラード<You're Not Alone>などが印象に残るが、個人的なハイライトは、メロウ・フォークからホーンを交えてハートフルに盛り上がる<Precious Time>。コレ、フィル・コリンズが歌っても似合いそうだな。

クラプトン周りでは、アンディ・フェアウェザー・ロウが何度かライヴ・レストランで来日公演を行っているけれど、ポールのソロ来日がないのは、どうにも解せない。ディスコグラフィを見れば分かるように、実に精力的にライヴ活動を展開している人だ。日本にはずーっとポール作品の国内仕様盤を出しているインディ・レーベルがあるけど、何もアプローチしてないのだろうか? 常識的に考えて、フェアウェザー・ロウよりは確実に動員できると思うんだが。コロナ明けたら、ぜひ頼むヨ