pat metheny_side eye

パット・メセニー、何と今年2枚目のアルバム。と言っても前作『ROAD TO THE SUN』は、作曲家:パット・メセニーによるクラシカル・アルバムであって、当人は演奏自体に関わらない変則的作品。だから実質的には、20年初めにリリースされた『FROM THIS PLACE』以来のニュー・アルバムといっていい。あのアルバムは、カナザワが大好きだったパット・メセニー・グループ的ニュアンスが強く滲み出ていて、久々によく聴いた。パット自身、アントニオ・サンチェス(ds)にグウィリム・シムコック(pf)、リンダ・メイ・ハン・オー(b)という編成は気に入ってたみたいで、コロナ・パンデミックがなければ、その後もライヴ・ツアーを続けていたそうだ。

でもこのSide Eyeプロジェクトは、それとは別のコンセプトを持っていて。どうやら優れた新人ミュージシャンを発掘し広く紹介していくのが目的らしく、ラインナップを固定しないのが特徴らしい。元となるアイディアは5〜6年前から始動し、パットの自宅でジャム・セッション的に行われていたそうだ。今回フィーチャーされているのは、Side Eye Vol.IVに当たるジェームス・フランシーズ(kyd)とマーカス・ギルモア(ds)とのトリオ。19年の来日時は、フランシーズとドラムにネイト・スミスという Vol.III の編成だった。驚異的テクニックを持つというフランシーズは、目下のパットのお気に入りキーボード奏者。彼とパットのデュオ+ドラムというのが 現行Side Eyeの基本パターンらしいが、それも固定ではなく、どんどん他のミュージシャンも入れて、出入り自由の流動的ユニットを目指すとされる。

今作に収録されているのは、パンデミックで全米がロックダウンに突入する直前にニューヨークでライヴ・レコーディングされた4曲と、スタジオ録音が4曲。しかも新曲もあればカヴァーもあり、セルフ・リメイクにも取り組んでいる。古くはデビュー作『BRIGHT SIZE LIFE』からのタイトル曲と<Sirabhorn>、『LETTER FROM HOME』からの<Better Days Ahead>、そしてマイケル・ブレッカーのアルバム『TIME IS OF THE ESSENNCE』でエルヴィン・ジョーンズと演っていた<Timeline>。カヴァーは、パットのライヴではしばしば取り上げられている、オーネット・コールマンのブルース・チューン<Turnaround>。でもこの曲、リズム・フォーマットはブルースでも、中身は全然そうなっていないのがミソ。新曲<Lodger>も、ジミ・ヘンドリックスを髣髴とさせるブルース・ロック・スタイルだ。

ベースレスの編成だから、鍵盤がベース・パートを弾くのはデフォルト。でもピアノがソロを弾いている時は、パットがギターで低音パートを弾くことも。シンセやギター・シンセも鳴っているし、シーケンサーも使っている。オーケストリオンをサンプリングして、とても3人とは思えぬラージ・アンサンブルを創出している曲もある。そういう点では、若いメンバーと共にパット・メセニー・グループや初期ソロ作に回帰しているテイもあって。3人だけど、いわゆるジャズ・トリオに捉われない発展性でもって、新人達の才能を鼓舞する、それがパットの狙いだろう。

ちなみにこの新作、国内プレス盤は出ないけれど、日本向けのボーナス・トラックと解説をつけた輸入盤ジャパン・エディションというのがあって。コレおそらく初めての試みだと思う。当然、パットのような大物だからこそできるコトではあるけれど、こういうCDが徐々に増えてくるとしたら、ちょっと複雑な気分だなぁ〜。