larry carlton_paul brown

クロスオーヴァー/フュージョン系ギタリストとして、もう完全にレジェンドの一角を成しているラリー・カールトン。でも、こと作品という話になると、もうネタ切れなんだと思ってきた。何せこの20年間、出すアルバムは、スティーヴ・ルカサー、ロベン・フォード、松本孝弘、デヴィッド・T. ウォーカー、 SWRビッグ・バンドなどとの共演作ばかり。しかもそのほとんどがライヴ・レコーディングだ。中にはグラミー賞をもらうなど高く評価された作品もあるけれど、ある意味ステージならではのハプニング頼りの面 無きにしも非ずで…。

そんなところに届けられたのが、ラリーとポール・ブラウンのギタリスト共演盤。またか、と思いつつ、でもその顔合わせの妙に心躍らせてしまう自分がいる。なにせポール・ブラウンはゼロ年代初め、ラリーの2度目のワーナー在籍期のプロデューサーで、『FINGERPRINTS』(00年)や『DEEP INTO IT』(01年)でタッグを組んだ人。その音はまさにスムーズ・ジャズどっぷりで、ラリーのコア・ファンにはちょっと引かれつつ、でもラリーのギターだけは微塵もブレないという、ある意味スゴイ作品だった。それ以前のGRP期のラリーは、ちょっとヤワくて日和っている印象だったのに、当時の流行の真っ只中に突進していったスムーズ・ジャズ作が、逆にラリーのシグネイチャー・プレイを浮き上がらる結果になって痛快だったのだ。

だからそれを踏まえての再会セッション。当然プロデュースは今回もポール・ブラウンだが、今回は制作以前に、ギタリストとしてラリーと対峙している。それに今のスムーズ・ジャズは以前ほど画一化してなくて、程よく自由だから、ラリーにとっては前向きなプランだったのだろう。

ラリーと共演した後の04年に初リーダー作を出したポールも、既に自前作は10枚前後。アルバムごとにゲストを呼ぶのは当たり前だが、アルバムどっぷりのフル共演となると、マーク・アントワンとのジョイント作があるくらいか。ラリーもポールも自分のレーベルがあるのに、 Shanachieからリリースされたということは、 Shanachieの持ち込み企画だと思われる。バックの陣容は、グレッグ・カルーキス(kyd)、レニー・カストロ(perc)、ゴードン・キャンベル(ds)など、ポール寄りの人脈。1曲だけラリーの息子トラヴィスがベースを弾いている。

でもサウンド面のイニシアチヴを取っているのは、シェイン・テリオットという新進クリエイターだ。曲作りから ほぼ全曲のアレンジ、リズム・ギター、ベース、キーボード、プログラムと、八面六臂の大活躍。何処かで聞いた名前だと調べてみたら、ダリル・ホールの名物番組"Live from Daryl's House" のミュージカル・ディレクターを務めていて、現在はホール&オーツのツアーにも同行しているらしい。本職はギターで、ニューオーリンズ出身。ネヴィル・ブラザーズのツアーやレコーディングに起用されたのを皮切りに、ウィリー・ネルソン、ドクター・ジョン、アラン・トゥーサン、ジョン・クリアリーといったNOLA人脈の他、ビヨンセ、リッキー・リー・ジョーンズ、ボズ・スキャッグス、リトル・フィート、マリア・マルダー、マデレイン・ペルー、意外なところで イエス周辺プロジェクトのThe SYNとも共演している。間違いなくこれからもっと台頭してくる逸材で、ポールも目を掛けているだろう。1曲リトル・フィートのケニー・グラッドニーが楽曲提供してベースも弾いているのが謎だったが、シェインの経歴を追っていて腑に落ちた。そういえば、通常は誰かシンガーを立てて歌モノを任せるのがポールのパターンなのに、1曲自分でゆる〜く歌っている。まぁ、ラリーとの完全デュオのブルージーなナンバーなので、特殊な例だと思うけど。

ポールとの再会セッションといっても、今回はギタリスト同士の共演。ラリーも少し気を使ったか、ラリー節全開だった『FINGERPRINTS』『DEEP INTO IT』ほど出ずっぱりではない。リードを取れば主張するが、ポールを立てるところもシッカリ弁えて。そのバランス感を楽しむか、いや〜ラリーはもっとガンガン行ってよ、と思うか。そこが評価の分かれ目だろうな。