skye

全員が70歳の新人バンド:SKYE(スカイ) のデビュー・アルバムが届いた。新人といっても、4人のメンバーは鈴木茂、小原礼、林立夫、松任谷正隆というお馴染みの面々。元々は中学の時から同級生で一緒のバンドを組んでいた小原と林が、あるオーディションの対バンにいた鈴木を誘ってバンドを結成したのが最初。ギターを弾いていた小原は、この時ベースに転向している。バンド名のSKYEは、林が初めて買ったカル・ジェイダーのレコード・レーベル名(ゲイリー・マクファーランドやガボール・ザボもいた)から拝借したそう。この時のオーディションは立教大の学生団体が主催者で、そこにいたのが4歳年上の細野晴臣だった。
間もなく彼らは細野の家にレコードを聴きに行ったり、セッションに誘われるように。そこで紹介されたのが高橋幸宏。一方で林が参加していた高校の軽音部には、後藤次利がギターで加入してきた。そうこうするうち、細野が鈴木をはっぴいえんどに誘って、SKYEは解散。小原は幸宏と一緒にガロのバック・バンドへ。林はブレッド&バターの岩沢兄弟と知り合い、大所帯バンドのペネロープを結成。そこには後藤も参加したが、既にレコード・デビューしていたブレバタとアマチュア風情が混在していては長続きせず、すぐに瓦解。しかし林は、このあたりの人脈から南正人や吉田拓郎のセッションに呼ばれ、そこで松任谷と一緒になった。そして小坂忠から声が掛かった時に、松任谷や後藤を誘い、これがフォー・ジョー・ハーフになる。こうした流れが更に発展して、はっぴいえんど解散後の細野・鈴木が、林・松任谷とキャラメル・ママ〜ティン・パン・アレイを結成。吉田拓郎のアレンジを担当していた加藤和彦は、サディスティック・ミカ・バンドに小原&幸宏のリズム隊を迎える。この辺りが、今や一大ブームを巻き起こしているシティ・ポップの原点だ。

そんな彼らが、いま改めて一緒にバンドを組んだのは、この4人が最近何かと顔を合わせる機会が増えたからだろう。彼らがバンドを組む話を最初に耳にした時は、長年プロデュースやアレンジに専念していた感のある松任谷の参加に驚いた。でもある種同窓会的なゆる〜いノリに、そういうことか、と納得できた。実はアルバムはもう結構前に完成していたと聞いたが、コロナ禍でリリース・タイミングを窺っていたらしい。彼らがブレッド&バターや尾崎亜美のライヴでバックを務めた時に、それぞれSKYEコーナーが用意され、それを3回ほど観たが、何とも余裕綽々、何とも楽しそうにロックン・ロールを演っていたのが印象的だった

そう、この巨匠4人のチーム・アップには、我々 どうしても熱い目線を注ぎがちになる。でもそれは間違いの元。イメージとして近いのは、礼さんが屋敷豪太と組んでいたThe Reneissanceだ。アレも肩の力が程よく抜けた楽しいロックン・ロールを披露していたが、SKYEもそんな感じ。曲作りなどで中心的役割を担っているのは小原と松任谷で、林は作詞でも貢献している。対して鈴木のリード・ヴォーカルは<ちぎれ雲>だけ(交代で歌う曲は別にアリ)。書き下ろしはそれとインスト1曲のみで、ちょっと寂しい感じは否めない。でも逆にその<ちぎれ雲>がアルバムで一番個性的で、異彩を放っているから面白い。

期待がデカ過ぎ、ちょっと聴いただけでは肩透かしを喰らったと感じる人が少なくないと思うが、メンバーの狙いを理解した上で聴くと、ナルホド、と思える。オリジナルSKYEは主にブリティシュ・ロックをコピーしていたらしいが、今のSKYEもローリング・ストーンズやフェイセズを思わせつつ、時にビートルズっぽいアレンジを垣間見せる。<Dear M>なんて、まさに彼らの決意表明のような楽曲(でも適度にゆる〜い)。<Isolation>や<Reach Out To The Sky>だって、コロナ禍を皮肉った歌詞がイケてる小粋なロックン・ロールだし、<どちらのOthello>も人種問題を揶揄しているように聞こえる。ホーン・セクションは市原ひかり&小林香織という、こちらも若き女性たちの同級生チーム。お爺ちゃんたち、シッカリと若い女子を侍らせてますな

いやいや、若い娘たちだけでなく、松任谷由実&尾崎亜美という奥様たちも<Always>に。この曲には小坂忠、ブレッド&バター、吉田美奈子、矢野顕子、佐野史郎という、ごく親しい友人たちも一緒にコーラスを取っている。それ以外は、ほぼ4人で賄っているのも好感。ヴォーカルなんていわゆるヘタウマなんだけど、な〜んか楽しい

一聴さり気ない音作りに聴こえたとしても、楽器のトーンのひとつひとつ、スネアのワン・ショット ワン・ショットに、マエストロ集団らしい経験とセンスが息づく。聴くほどに味わいが増してくる、長くジックリ付き合いたいアルバムだ。