ronnie foster_cheshire cat

好評を呼んでいるユニバーサル・ジャパンの入手困難盤復活、廉価盤シリーズ。先月・今月はジャズ方面に移行していて、“ここ数年入手困難だったジャズの裏名盤をピックアップ!” と謳い、全200タイトルを復刻している。ほとんどは王道モノなので自分には縁が薄いが、よくよくチェックすると、ブルーノートのLA-BN品番もいくつかラインアップ。例えば、ホレス・シルヴァーとかドナルド・バード、ボビー・ハッチャーソン、チコ・ハミルトン、ジーン・ハリス、ジョン・リー&ジェリー・ブラウンなどの、ジャズ・ファンク物。オォ、現在執筆中の『AOR Light Mellow Premium 02』に掲載予定のマキシ・アンダーソンも、おそらく3回目の復刻で。その中から、AORファンにも馴染深い黒人キーボード奏者ロニー・フォスターの75年作『CHESHIRE CAT(チェシア・キャット)』を紹介しよう。

ロニー・フォスターといえば、ジョージ・ベンソンやスティーヴィー・ワンダーのサポートで有名なキーボード奏者。70年代にブルーノートで5枚(ライヴ盤含む)、米コロムビアで2枚のリーダー・アルバムを出し、80年代には日本のエレクトリック・バード(キング)でもアルバムがある。その内ブルーノート最終作に当たるのがコレ。ちょうどベンソン・バンドに参加した頃のレコーディングで、この翌年に、かの名盤『BREEZIN'』が出る。このアルバムのプロデュースも、そのベンソンだ。

当然そのサウンドも、当時のベンソンと親和性が高い。元々はオルガン奏者として注目されたロニーだけれど、ここでは鍵盤全般を弾き倒していて、しかもオープニングの<Like A child>から、メロウなミディアムに乗ってチョイ甘めのヴォーカルを聴かせる。決して上手いヴォーカルではないけれど、歌いクチはスティーヴィー・ワンダー似。2曲目<Tuesday Heartbreak>は、そのスティーヴィーのカヴァー。ゆったりスタートするが、途中から倍テンになって、スマートなトーンのオルガン・ソロが躍動。再び元のテンポに戻って落ち着きを取り戻し、エンディングへ向かっていく。

続いての<Fly Away>は、これまたクールで独特の浮遊感を持つヴォーカル・チューン。が、これも後半はR&B色が濃くなり、エフェクティヴなオルガンでファンキーなソロが展開される。そしてアルバムで一番濃ゆいジャズ・ファンク・チューン<Funky Motion>、ベンソンがギター・ソロを弾いてロニーもオルガンで暴れまくるタイトル曲へ。

バックは、CTIでのリーダー作が有名なジョー・ベック(g)、ボブ・ジェイムスのバンドで活躍したゲイリー・キング(b)、デヴィッド・ボウイ『YOUNG AMERICANS』からベルリン3部作あたりで叩いていた黒人ドラマー:デニス・デイヴィス、それにエムトゥーメイが本業のパーカッションで。一部入れ替えもあるが、基本的に同じフォーマットでセッションに臨んでいるのがイイ。それにロニー自身の鍵盤の音が多彩で、ラストの<Heartless>では、全編シンセを弾きまくる。この人、基本的にピアニストではなくて、やっぱりオルガン・プレイヤーなのだな。

おそらくこのアルバム、今回が国内3度目の復刻。フィジカルも将来は危ういから、廉価のうちに買うときや。そしてユニバーサル・ジャズには、1000円ポッキリの廉価盤じゃなくてイイから、配下レーベルにまだまだ眠っている多くの未CD化作品に光を当てて欲しい。チープ・プライスで手間を省いて入手困難盤を復活させるより、もっと優先すべき、文化的意義の高い重要な発掘ワークがあるハズだ。