the flock

少し前にトリリオンやデヴィッド・サンシャスを紹介した、ソニー・ミュージックの【プログレッシヴ・ロック紙ジャケット・コレクション Vol.3 アメリカンロック編】から、何と28年ぶりの国内再発になるというザ・フロックのデビュー・アルバム(69年)を。看板はプログレだが、作品的にはジャズ・ロックの趣きで、しかもフィーチャーされるのはジェリー・グッドマンのヴァイオリン。それなのに3管を擁し、ブラス・ロック的側面もあるという個性派だ。早い話、ブラッド・スウェット&ティアーズにヴァイオリンを放り込んだようなスタイルを持っている。

ジェリー・グッドマンといえば、ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラの結成メンバーとして有名。その前に在籍したのがこのザ・フロックで、本作、そして70年に2nd『DINOSAUR SWAMPS(恐竜の棲む沼)』を発表。続いて3作目のレコーディングに入ったが、その途中で意見の衝突からバンドが解散し、ジェリーはマクラフリンの誘いに応じている。一方でザ・フロックは再編され、75年にフェリックス・パパラルディの制作で、3枚目のアルバム『INSIDE OUT』をリリース。その後、再度の解散を迎えた。

さて、ロック方面のヴァイオリン弾きというと、カーヴド・エア〜ロキシー・ミュージック〜UKのエディ・ジョブソン、キング・クリムゾンのデヴィッド・クロス、カーヴド・エア〜ウルフのダリル・ウェイ、カンサスのロビー・ラインハート、PFMのマウロ・パガーニ、ジャズ・ロック寄りのところでジェリーの後任としてマハヴィシュヌに参加したジャン・リュック・ポンティ…、なんてところがすぐに思い浮かぶ。他にもイッツ・ア・ビューティフル・デイ、ハイ・タイド、イースト・オブ・エデン、エスペラント、なんてマニアックなヴァイオリン入りグループも。まぁ、いずれにせよ、ロック方面では変り種には違いない。そしてその多くが、いわゆるクラシック上がり。

でもジェリーのヴァイオリンには、クラシックっぽさが薄い。実は両親は共にシカゴ交響楽団の弦楽器奏者だそうだから、当然クラシックは勉強しているはずだが、他方で叔父がジャズ・ピアニスト/作曲家マーティ・ルーベンシュタインだそうだから、彼自身はジャズ志向を持って専門教育を受けたのかもしれない。時折カントリーっぽくなるのは、ロビー・ラインハートにも共通するが、これは米国人ヴァイオリン弾き(≒フィドラー)の宿命みたいなモノか? 

キーボードレスでヴァイオリンとブラス・セクションが武器、というユニークな編成のザ・フロック。時代的に、前述のB.S.&T.だけでなく同郷のシカゴ、チェイスなども人気を博していた。だからこの1stでは、差別化を図るためだったのか、ヴァイオリンのフィーチャー度が高い。プログレと謳われるだけあって、15分超の大曲<Truth>があったり、キンクスのカヴァー<Tired Of Waiting>なども。でも改めて聴いてみると、シカゴやB.S.&T.、カンサスへの影響力はかなり大きそう。

それと、ギター兼任のフレッド・グリックスタインのリード・ヴォーカルがすごく良くて、コーラスもなかなか充実。ちょっとユーライア・ヒープっぽいところがあって、イエスより確実に歌えている。個人的には、B.S.&T.のデヴィッド・クレイトン・トーマスほどのクセが無い分、取っ付きやすくて好感。型にハマった正調プログレでは無いものの、ジャズ・ロック、ブラス・ロック、ヴァイオリン・ロック、黎明期クロスオーヴァー、そしてもちろんUSプログレと、多方面に渡ってインフルエンスを与えたバンドだと思う。この機に是非、再評価すべし、だよ。