blue peppers_symphony

8日にリリースされるブルー・ペパーズ、4年ぶりのニュー・アルバム『SYMPHONY』。ひと足早く楽しませてもらってます。…ってか、数曲のデモ・テープの段階からラフ・ミックスに至るまで、要所要所で聴かせてもらっていたけど、曲順も決まってこうしてフル・アルバムの商品として手にすると、やはり感慨がありますな。そして全貌がシッカリ把握できたことによって、彼らの成長ぶり、スケール・アップの度合い如何に大きいか、それがストレートに伝わってくる。ううン、身内みたいなモノだから言うんじゃない。ココは 音楽ライター20年超という自分のキャリアとプライドを賭けて、ハッキリと言わせてもらう。このステップ・アップは 本気でスゴイぞ 、

先行リリースされた7インチ・シングル『Believe in Love / マリンスノーの都市 feat. 佐々木詩織』の登場が19年12月。それでさえ2年半ぶりのリリースで、ちょっと待たせ過ぎの感があったのに、まさかそこからまた2年費やすとは…。実際、不慮のトラブルでレコーディングが完全にストップし、その復旧にかなり長い時間を割かれたリもしている。サスガにあれには、当人たちも焦ったに違いない。でもそれを克服、待たされただけのコトはあるな、という会心作が届けられた。

デビューEP、そして1st フル・アルバム『RETROACTIVE』が、いわゆるシティ・ポップ感覚で作られたとすると、これはもっとアーベイン。具体的には、レイト80'sサウンドへの深いリスペクトが込められていて、最近の若手に多いハジけたポップ感覚とは一線を画し、もっと崇高で気位の高いアート感覚を打ち出している。最初に2人からサウンド・コンセプトを聞かされた時は、もっとファンキーでブラック・コンテンポラリー寄りの仕上がりになるかと想像したが、やっぱりコレは広い意味でのAORだな。でもそこに今ドキの20歳代らしいセンスをブレンドしているから、黄金期AORのコピーにはなっていない。デヴィッド・フォスター風だったり、アル・ジャロウ風だったり、いろいろな所からのインフルエンスを覗かせてはいても、それは彼らなりの咀嚼を経た独自表現なのである。

一聴して誰もが気づくのが、福田直木のシンガーとしてのスキル・アップだろう。ずいぶん音域が広くなったと感じるし、声そのものの伸びが違う。クレヴァーなヤツだから顔には出さないけど、実は結構なトレーニングを積んだのではないかな? 作曲の方でも杉山清貴に楽曲提供したりして、着々と評価を上げている。その相方:井上薫は、既にキーボード奏者/アレンジャーとして各方面から引く手数多。高中正義バンドではもう3年以上プレイしているし、最近は彼が以前からフェイヴァリットに挙げていた古内東子のサポートも行なった。日本の現行セッション・シーンに於いても、まさにトップ・クラスの若手成長株である。このニュー・アルバムでは、これまでの作品に比べて鍵盤のウェイトがずいぶん大きくなっていて、それこそシンセのオーケストレーションやシンセ・ベースのカッコ良さといったら…。それはそのまま、井上薫の進化でもある。また準レギュラーの佐々木詩織(vo)、常連の外園一馬(g)や伊吹文裕(ds)に加え、ベテラン:宮崎まさひろ(ds)、新進の庵原良司(sax)や竹之内一彌(g)が参加しているのは、彼のセッションマンとしてのフィールドがドンドン広がっていることを証明している。

加えて、かのリー・スクラーが3曲ほどベースをプレイ。これは福田がリー大好き人間だったことに端を発するが、人づてにそこに辿り着いてしまう運の強さ、これが今の2人には備わっている。また<硝子の日々>をTWEEDEESの清浦夏実が歌っていたりも(作詞も)…。そうした部分も、ブルー・ペパーズとしての確かな進歩。歌モノにスムーズ・ジャズした<Owl's Manner>を混ぜ込んで、メンバー自身がメロディを奏で、シッカリとインスト曲として主張させているあたりも、凡百のシティ・ポップ・グループにはできない芸当だ。

既にティーザーが公開されているので、アルバムの中身についてはそちらを覗き見チェックして戴くとして、アートワークに隠された仕掛け、これにもニヤリ 福田が手に持ったアナログ・レコードと、フォト下の “DIGITAL MASTER” のマーク。分かる人はすぐ分かるけど、それが彼らのスピリットのアイコンなのだ。